神様修行はじめます! 其の四
主さんも新天地で、相変わらずの江戸っ子姐さんぶりを発揮してるみたい。
島の人たちは異形の主さんを、まだ受け入れきっていないようだけど。
あの美しさとあの気風の良さに、みんな徐々に飲み込まれつつあるらしい。
白妙って呼んでもあんまり怒らなくなったって。
大変な騒動が起きて、島は揺り動かされてしまったけれど、浄火ならきっと大丈夫。
長として立派に島を治めてくれると、あたしは信じている。
「善き御日和に、当主様にはご機嫌麗しく」
いきなり背後から声をかけられ、あたしの心臓が飛び跳ねた。
勢いよく振り返って、そこに見知った顔を見つけてまたビックリ。
「あ! あなた、十四番めさん!」
「・・・成重(なりしげ)ですが」
「そうそう成重さん!」
子作りマシーンの、十四番目の子。
あの影の薄い末子の、印象の弱い顔がそこにあった。
なんか、すっごい久しぶりな気がするな。
あ、そうだ。挨拶しなきゃ。
「・・・えっと、このたびはご愁傷さまでした」
あたしはペコリと頭を下げた。
子作りマシーンは、不運にも常世島の異形に襲われて死亡。
という正式発表になっている。
本人が死亡という事で、お岩さんへの婿入り話はめでたく消滅。
・・・あ、でもこの成重さんが婿入りするって話もあったんだっけ。
「これは、ご丁寧に痛み入ります」
そう言って頭を下げ返してくれた彼に、あたしは質問した。
「ところで成重さん、権田原への婿入り話はどうなったんですか?」
「その話は立ち消えになりました。私も忙しくなりましたので」
「そっか。葬儀とか大変ですね」