神様修行はじめます! 其の四
もの哀しい、うすら寒い風の吹く、離れ小島の様子が目に浮かぶ。
笑い声とか、人々が交わす楽しげな会話とか、一切聞こえない静寂の島。
・・・寂しい思いをしてきたのかな。
ずっと苦労してきたんだろうか。
そんな島で暮らしていれば、とても楽な毎日じゃなかっただろう。
こいつがめっぽう明るいのって、そんな悲しい生い立ちの反動かもしれないな・・・。
「だからさ、ずっと夢だったんだよ」
浄火が振り返り、場の空気を変えるような明るい声を出す。
「里緒みたいな可愛い女の子と手を繋いで、愛を語り合うのが」
・・・明るいっつーよりも、ひたすらやっぱり、ずうずうしい!
語り合ってないっての! しかも、いまの会話のどの辺に愛が存在してんのよ!
「存在してないものを、勝手に確信すんな! お前はアブナイ宗教家か!」
「結婚する者同士が語り合えば、そりゃ愛だろ?」
「結婚なんてしない!」
「する」
浄火はニッと笑って、あたしを見ながら言い切った。
「するよ、絶対。するんだオレは」
「だから、ひとりで勝手に決め・・・!」
「里緒をひと目見た時、伝わってきたんだ。この子とオレは同じ一族だって」
「・・・・・・・・・・・・」
「オレは、この子と結婚したいって強く思った」
あたしはノドが詰まったように、声が出なくなってしまった。
とまどいながら目の前の男を無言で見つめる。
浄火の明るい表情の中に真剣な気持ちを感じて、どう反応すればいいのか分からない。