神様修行はじめます! 其の四
お岩さんの恋
その後しばらくの間、あても無くブラブラと歩き回って。
あたし達は散歩を終えて、屋敷に戻った。
「お帰りなさいませ。浄火様。天内のお嬢様」
セバスチャンさんが玄関先で待っていて、お出迎えをしてくれた。
「お客様におもてなしもせずに、申し訳ございません」
「気を遣うなって。当主が病気じゃいろいろ忙しくて大変なんだろ? あんたも」
「お言葉、痛み入ります。さぞお疲れでございましょう。中へどうぞ」
あたしと浄火は屋敷の中へ通され、それぞれの部屋へ案内される。
「それじゃ里緒、また後でな」
あたしの部屋の前で、浄火が手を振って廊下の奥へと消えていく。
その後ろ姿を見送ってから、あたしはしま子と一緒に自分の部屋へ入った。
畳の上にヘタンと座り込み、なんとなく、大きく息を吐く。
そして室内をぐるりと見回した。
十畳ほどの広さの和室。
床の間の掛け軸の花の絵や、違い棚の黒い香炉が、素朴ながら品が良い。
床柱も質のよさそうな化粧材で、木目の流れがまるで絵画のようだ。
欄間の彫刻も松や竹や梅をあしらい、丁寧で凝っている。
いい部屋だなあ・・・。
しま子が、大きな手で器用にお茶を入れてくれている。
急須から注がれる緑茶の音と香りが、なんだかホッとさせてくれた。
机の上で頬杖を突きながら、ぼんやりと湯気を眺める。