泣きたい夜には…~Hitomi~
花火の夜の告白
目を閉じて、大きく深呼吸した。
1回、2回と心を落ち着かせ、ゆっくり目を開けて緊張した面持ちの慎吾を見た。
──── 話は中学時代に遡る。
「え!?料理教室?」
私、まだ中学生なんだけど……
戸惑う私にお母さんが言った。
「あなたは桂川総合病院の娘なのよ。だから外に出て恥ずかしくないように知性と教養を磨かなければならないの」
知性と教養。
幼い頃から何度となく言われた言葉。
物心ついた時から色々な習い事に通っていた。
ピアノにスイミング、茶道に華道、あとは、英会話と家庭教師。
これらはわかる。
なのに、
「何で料理なの?」
幼い頃からお母さんのお手伝いをしていたから包丁だって使えるし、この間は、お兄ちゃんのバースデーケーキだって自分で焼いた。
完璧な出来上がりで大好評だったのに。
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