泣きたい夜には…~Hitomi~



慎吾は私が来たことにも気づきもせずに、瞬く星空を吸い込まれるように眺めていた。


そーっと石造りの露天風呂に入ると、


「もう、いつまで入ってるのよ!待ちくたびれちゃったじゃないの」


私の声に慎吾は体をビクつかせ、驚いた顔でこちらを見た。


慎吾に見られて恥ずかしいけれど、もう開き直るしかない。


慎吾の隣に座ると、温泉の気持ち良さに


「あぁ、気持ちいい。うちにも温泉欲しいー!!!!」


思わず声が出た。


「お前、俺と入るの……嫌じゃなかったのか?」


戸惑う慎吾に首を振ると、


「嫌じゃなくて、その……今までだって一緒に入ったことなかったでしょ?何だかその……恥ずかしくて……」


頬が熱くなって両手で押さえた。


だって、ベッドよりもお風呂の方が明るいから見られるのが恥ずかしいもの。



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