泣きたい夜には…~Hitomi~
「すぐに出てくると思っていたのになかなか出て来ないし。眠くなってきたから覚悟を決めて入って来たの」
やはり恥ずかしくて、慎吾に背中を向けた。
しんと静まり返った露天風呂。
何か話そうと思っても何を話したらいいのかわからなくて……
慎吾、何か話してよ。
そう思い、振り返ると…
………ッ!!!!
「やだ、慎吾!鼻血鼻血!長湯し過ぎだよー!」
結局、ゆっくり温泉に入ることもできず、のぼせあがった慎吾を支えて出ることに……。
浴衣を着た慎吾をベッドに寝かせた。
慎吾はしゅんと叱られた子犬のような表情で私を見た。
そんなに落ち込まなくてもいいのに。
「大丈夫?これ飲んで」
冷たい水の入ったグラスを慎吾に渡すと、
「すまない」
慎吾は体を起こして水を一口飲むと、再び横になった。
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