泣きたい夜には…~Hitomi~
「慎吾がこんなに長風呂だなんて思わなかったわ」
慎吾の額に冷たい濡れタオルを乗せると気持ち良さそうに目を閉じた。
「ひとみ、ごめん」
情けない声を出す慎吾に、
「確かにいいお風呂できれいな星空だったけど、のぼせるまで入らなくても」
その言葉に、慎吾は顔を赤くして困惑した表情を見せた。
また鼻血が出ても大変なので深くは追及するのはやめておこうと思った。
「何だか今日は色々なことがありすぎて、頭の中が整理しきれない」
慎吾の言葉に頷いて、
「そうだね」
慎吾の隣に横たわり、天井を見た。
急病人の心肺蘇生に、私の告白
本当に色々なことがあった。
「ねぇ、慎吾」
「ん?」
私は天井を向いたまま言った。
「さっきの話……慎吾だけだよ、話したのは。向井にだって話していない。
でも、私にはとても悲しい話で、思い出すのも辛かったのに……涙が出て来なかった」
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