泣きたい夜には…~Hitomi~



いつもなら大号泣のはずなのに。


慎吾は私の手をぐっと握りしめると、


「それはお前が医者としてしっかりと前を向いて歩いているということじゃないのか?」


慎吾の言葉に応えるように手を握り返して、


「そうなのかな…?よくわからないけど」


しんと静まり返る部屋。


だけど、空気は穏やかで、その心地良さに目を閉じた。


「また来ような」


慎吾に抱きしめられ、


「うん」


頷いて、慎吾の胸に顔を埋めた。


慎吾の温もりと息遣いは私の体を熱くさせ、甘い潤いを与えていく。





「慎吾……抱いて」


囁くように言うと、ピクンと反応する慎吾の体。


「鼻血、また出たりして」


確かにその心配はないわけではないけれど、


それって……。


「もぉぉぉ!雰囲気ぶち壊し!」


だけど、怒るのはここまで。



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