泣きたい夜には…~Hitomi~
「大丈夫、私が止血してあげるから」
慎吾の頬にそっと触れ、指先で顔の輪郭をなぞっていくと慎吾の目に欲望の火が点る。
慎吾は私の前髪を指でかき上げると、額に唇をそっと押し当てた。
唇は額から頬に移り、私の唇を避けるようにキスを繰り返していく。
もう、焦らさないでよ。
もどかしさのあまり、慎吾の唇を求めるように口が開き、体を捩じらせた。
「ここに欲しいの?」
唇に慎吾の指が触れた。
それだけで体の奥が潤み、甘く疼く。
そして、
小さく頷くと、慎吾を見つめた。
「ダメ、その目…反則!」
慎吾は頬に触れると、甘くて深いキスを落としていく。
今夜の慎吾はいつもと違う。
私の過去も何もかも丸ごと包み込むように愛してくれた。
ゆったりと優しく…
私も慎吾を穏やかな気持ちで受け入れた。
慎吾は私を抱きしめると、
「愛してる」
そっと耳元で囁いた。
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