泣きたい夜には…~Hitomi~
向井先生の威圧的な態度と言葉。
わかっている。
本当は私なんかより小野塚先生や倉橋先生のような経験豊富なドクターが来た方がベストだということくらい。
だけど、
経験値は低くても私だって小児科医。
そんなことで怯む私じゃない!!!!
私は向井先生をまっすぐ見た。
かつては愛した人だった。
医師として、
人として、
色々なことを教えてくれた人。
これは、指導医だった先生の私への最後の指導。
これが終わったらアメリカ行きの結論が出る。
「向井先生、先生は私の指導医でしたよね?ご自分が手塩にかけて指導した私を信じられないんですか!!!?
私はこれでも未熟児のエキスパートです。信じてください!何があっても先生の赤ちゃんは私が必ず助けます!!!!」
先生に思いの全てをぶつけた。
向井先生は大きく頷くと、
「わかった、子供の命はお前に預けた。頼んだぞ、浅倉」
その言葉に、無言で頷くと、分娩室に入りかけたが、
「慎吾、今日は帰れないかもしれないから夕べのカレー、温めて食べてね」
背中を向けたまま慎吾にそう言うと、分娩室へと入って行った。
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