泣きたい夜には…~Hitomi~
彼の額にそっと触れてみる。
熱い。
顔だけではなく全身が熱の塊のようだ。
身体も辛そうだし、この熱では保冷枕なんてすぐに温まってしまう。
「冷却シート貼った方が楽になるわよ」
彼にそう声をかけると、心底嫌そうに顔を歪めた。
彼の目が、「ガキじゃあるまいし!!!!」そう訴えているように感じた。
「ねぇ、今、子供みたいって思ったでしょ?」
彼は目を見開いた。
ほら、当たった!
本当にわかりやすくて営業職なんて向かないわね。
「見るのは私だけなんだから我慢しなさいよ」
救急箱からシートを取り出し、フィルムを剥がすと、有無を言わせず彼の額にペタッと貼りつけた。
複雑な表情を見せた彼だったけれど、冷却シートが心地良かったのかすぐに眠ってしまった。
点滴を終え、処置を済ませると、
「もう朝か」
窓の外は白み、1日の始まりを告げようとしていた。
1時間ほど仮眠をとり、彼の分も朝食の用意をした。
まだ眠る彼の額に触れてみる。
「良かった、熱下がってる」
ひと安心だ。
朝食を済ませ、彼にメモと部屋の鍵を残して、仕事に向かうべく部屋を後にした。
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