泣きたい夜には…~Hitomi~



恥ずかしさをごまかすように、


「奥さん、ひとみちゃんを抱っこさせてもらってもいいですか?」


奥さんにお願いすると、ひとみちゃんを私の腕に抱かせてくれた。


出産直後は本当に小さくて今にも壊れそうだったけれど、今は倍以上に増えて安心して抱くことができる。


「お、おい!浅倉!落とすなよ!!!!」


向井先生が心配そうに声をかける。


もうすっかりお父さんね。


きっと娘に甘いお父さんになるんでしょうね。


でも、何で慎吾まで心配そうな顔で見ているの?


これでも私、NICU勤務の小児科医なんですけど。


眠っていたひとみちゃんが目を開け、私をじっと見つめている。


穢れのない綺麗な目に目頭がじんと熱くなっていく。


「大丈夫ですって!もう、ひとみちゃんのお父様は心配性ね。先が思いやられるわ。

ひとみちゃん、今度会う時は歩けるようになって、おしゃべりもするようになっているだろうね。あなたのお父様とお母様はとても素晴らしい人ですよ。あなたも優しくて思いやりのある女の子になってね」


そう語りかけると、ひとみちゃんは再び目を閉じ、すやすやと眠ってしまった。



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