泣きたい夜には…~Hitomi~
慎吾は泣きじゃくる私を強く抱きしめると、
「そんなんじゃひとみちゃんに笑われるぞ!」
意地悪く言うと、背中をポンポン叩いた。
「深夜でもいいからメールしろよ」
「うん」
「ファックスもOKだぞ」
「うん」
「せっかくSkypeに登録したんだから、たまにはかけてこいよ」
「わかった」
「それでも辛くなったら……俺がフィラデルフィアまで行くから!!!!」
その一言で、いつの間にか集まったギャラリーから拍手とヒューヒューと口笛が上がった。
恥ずかしくて、一瞬にして涙が引っ込んだ。
「ひとみ、行け!2年後、日本に帰国する頃には、ここにいる奴らだって今日のことを忘れているさ。だから、頑張ってこい!!!!」
慎吾に背中を押され、搭乗ゲートに向かった。
機内の窓から展望デッキを見ると、
「慎吾……」
笑顔で手を振る慎吾の姿に涙が零れ落ちた。
今だけは泣かせて
アメリカに着いたら泣きはしない。
私が泣くのは慎吾の前だけだから。
慎吾の姿を目に焼き付け、私はアメリカへと旅立った。
慎吾、
待ってて、
必ずあなたの元に戻るから。
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