泣きたい夜には…~Hitomi~
「ジントニック」
マスターに注文すると、
「相変わらずスカした男よね。学生の頃もひとりでワインとか飲んで浮いていたし……」
皮肉めいた言葉を吐くと、2杯目のビールも一瞬にして奴の体内へと流し込まれていく。
「お前、そのオネエ言葉やめたらどうだ?」
学生の頃は普通に男言葉だったのだが、そのゴツイ体とダミ声のオネエ言葉は何とも気味が悪い。
「いいじゃない、誰にも迷惑かけているわけじゃないんだし、普通に喋ったら子供が泣いちゃうのよね」
困ったわ~!なんて言いながら首を傾げる仕草は娘のひとみだったら悶絶するくらいに可愛い。
だがこいつでは、ホラー映画よりも恐ろしいものがある。
「いい結婚式だったわね」
「あぁ……」
「あのふたりを見ていると、こっちまで幸せな気分になって、まだその余韻に浸っていたくなってここに入ってきちゃったのよね」
嬉しそうな表情を見せる五郎に、
「わかる……俺も同じだ」
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