泣きたい夜には…~Hitomi~



左薬指に指輪がないところを見ると、独身か。


いや、結婚していても指輪をしていない男性も多いから何ともいえないところ。


ま、私には彼がいるし、どうでもいいことだけどね。


「こんばんは」


挨拶をすると、彼はちょっとはにかんで無言で会釈を返す。


言葉を交わしたこともなく、親しくなるわけでもなく、ただ挨拶のみ。


こんな関係が1年以上続いていた。


部屋に戻り、ゆっくりとお風呂に入る。


じんわりと体が温まり、疲労物質が抜けていくのを実感する。


「はぁ、気持ちいい」


至福のひととき。


お風呂から出て、髪を乾かしながらスマホを見るとメール着信のランプが点滅していた。


急いで開くと、

『今日もお疲れ様。まだ家に帰れないのかな?仕事忙しそうだけど、無理はしないように。
明日早いから寝ます。久しぶりの休みなんだからゆっくり休めよ、おやすみなさい。』


彼からのメール。



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