泣きたい夜には…~Hitomi~



あぁもうっ!


何てタイミングが悪いの。


電話して声が聞きたい。


でも、彼は明日、仕事。


寝不足で仕事に差し支えるといけないから朝になったらメールしよう。


「おやすみなさい」


画面に向かってそっと呟き、ベッドに入った。


そんな慌ただしくも幸せな毎日を失うことになるなんて、この時は知る由もなかった。




「熱下がったみたいね、もう大丈夫。よく頑張ったわねマミちゃん」


職場である病院の小児病棟で、すやすやと眠る女の子の頭をそっと撫でた。


一昨日、インフルエンザで外来を受診した5歳のマミちゃん。


脳炎を起こしかけていたので入院措置をとったものの、高熱が続き、予断を許さない状態だったが、ようやく熱が下がり、危険な状態を脱することができた。


「先生、本当にありがとうございました」


マミちゃんの両親が深々と頭を下げた。



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