泣きたい夜には…~Hitomi~



教授は戸惑う私に、


「何で知ってるのかって?だって、さっき廊下でふたりが話しているのを聞いちゃったんだもーん!」


そう言うと、意味ありげにニヤリと笑った。


だもーん!て……。


渋い教授のイメージが音を立てて崩れていく……。


「まぁ、いずれにしても成瀬くんはオススメ物件ですよ。

私は彼が新人の頃から知っていますが、どこかの誰かさんみたいに金や出世に釣られて結婚するような男でないことは確かですから、保障しますよ。

それじゃ、行きましょうか小野塚先生」


上杉教授は言いたいことを言うと、嫌がる小野塚先生を引きずりながら医局を後にした……。


「浅倉―!失恋したからって自棄になって成瀬ちゃん食ったらアタシが承知しないわよ!!!!」


小野塚先生の断末魔の叫びが廊下にこだました…。


食ったら、って……。


いくら私でもそんな節操のないことはしませんて。


今夜は帰さないかもしれないけれど。



.
< 42 / 286 >

この作品をシェア

pagetop