泣きたい夜には…~Hitomi~



「はぁーっ!」


向井先生とのこと、上杉教授まで知っていたとは……。


彼はオススメ物件、ですか。


今は新しい恋なんて考えられない。


「考えられないよ」


恋なんて。


病院を出ると、一旦マンションに車を置いて、待ち合わせた成瀬さんとタクシーでJR大磯駅へと向かった。


「一次会は任せてください。フレンチのいいお店、予約しておきますので」


と、成瀬さんが言っていたのでつい甘えてしまったけれど。


私から誘っておきながら、こんなことでいいのか、私……。


「ここのフレンチ、なかなかいけるんですよ」


入ったのは駅から徒歩数分のところにあるフレンチレストラン。


名前だけは聞いたことがあったけれど、話のタネに一度は行ってみたかったお店だった。


「予約しました成瀬ですが」


慣れた様子で成瀬さんはスタッフに名前を告げると、


「お待ちしておりました。お席にご案内いたします」


にこやかな笑みを浮かべたスタッフに奥の個室へと案内された。



.
< 43 / 286 >

この作品をシェア

pagetop