泣きたい夜には…~Hitomi~
意気揚々と電話を切ると、
「急患か?」
慎吾が心配そうに私を見ていたけれど、安心させるように首を振ると、
「双子の出産、しかも自然分娩!なかなか見られない珍しいケースだから行って来るね!」
慎吾は拍子抜けしたようで、
「へ!?あ、あぁ……」
どこか残念そうにも見えたけれど、急いで支度を済ませ、
「ごめんなさい…戸締りお願いね」
彼の手にスペアキーを乗せ、ふわりと唇を合わせると、
「急がなきゃ!!!」
慌ただしく部屋を飛び出した。
─── 数時間後、
感動的な出産に立ち会い、興奮冷めやらぬ深夜。
帰宅した私は、誰かにそれを伝えたくて…
といっても、慎吾しかいないんだけど。
迷惑を承知で慎吾の部屋のチャイムを押した。
「ふぁ…どうした?生まれたの?」
寝ぼけまなこでドアを開けた慎吾に抱きついて、今夜の出産について熱く語った。
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