NENMATSUラプソディ
 帰宅と同時に湯を沸かし、カップラーメンを作る。これ食べたらすぐ寝る。

 9時にはベッドに入り、目を閉じた。途端に携帯が鳴りだす。世界は私に彼氏もくれないのに、睡眠さえも奪うというのか。


 薄目で電話の主を確認すれば、美妃からだった。美妃か。三回無視したけど、四回も鳴るので、とりあえず出た。

 「メリークリスマス!!優菜!!」

 ものすごい騒音のBGMの中で、美妃がそう叫ぶ。


 「え?」
 「メリークリスマス!!」
 「え?」
 「メリークリスマス!!!」
 「え?」
 「っていうかあんた聞こえてるでしょ?」
 「ああ、翻訳できない日本語が脳内に入ってきたから
 「……なんていうか言葉もないよ……。ところでさ、あんた明日予定は?」
 「明日?仕事だけど」
 「仕事終わってからは何もないでしょ?じつはさ、今、惺のお店に来てるんだけどー」
 「クリスマスにホストクラブか」
 「クリスマスだからこそ、一番愛している男に会いに来てるのよ!ねえ、惺??」

何やらBGMが盛り上がる。

 「んでさー、いいものもらったから、あんたんちのポストの入れておいてあげる!」
 「はあ」
 「楽しみにしててねー!メリークリスマスよー!!」

 そう叫ぶ声が耳にじんじんと響いたまま、電話は唐突に切れた。


 寝るか。もう5回は呟いたであろうその言葉を、携帯に向かって言ってみた。
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