NENMATSUラプソディ
 久しぶりに私の心は、この冬の夜空の様にすっきりした。

 今年一年、というかだらーっと地中に潜り、9月過ぎてから急にじたばたと相手にひたすら合せて擦り減り、何も得ずにそうして暮れていこうとする今年の、終わりにしてはなかなかいい日であった。

 そう言えば、太るの気にして最近はこのハンバーガーすら食べてなかった。久しぶりに口に入れるファストフードのなんとおいしい事か。この体に悪そうなところがたまらん。

 私はすっかり上機嫌になり、自然な会話の流れでいろいろ聞かれたような気がするがなんにでもするすると正直に答える。もう二度と会わないし、喋ったところで、このお兄さんの記憶にもとどまらないだろう。

 来年はもっと頑張ってみようか。9月から大慌ての付け焼刃じゃなくて、ちゃんと計画的にね。

 こうやって他人に自分をさらけ出すのも案外楽しかったし、まあここまではちょっとあれだけど、もう少しやり方を考えてみるか。

 サンドバッグ代わりにしようとしてごめん。この人いい人だった。さすがプロだ。しかしお金の無い私はせっかくだけどお客さんにはなれない。

 営業を仕掛けようとする慧の言葉を封じ込め、私は軽やかに駅へ向かう。

 きっとこの人はお店でも上位な人なんだろう。大丈夫。見た目もいいし、きっといいお客さんたくさんつくよ。まだ若そうだし、未来は明るいぞ、青年!



 次の日も滞りなく一日が過ぎ、会社を出ようとするときに美妃から「どうだった?どうだった?」とまるでホストクラブの手先の様な営業メールが殺到していたが、とりあえず楽しかったけど私には合わぬと返信し、ビルを出た。

 今日もきれいな夜空が広がる。来年は誰かと見上げたいものだ。
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