NENMATSUラプソディ
「前にいろいろぶちまけたけた通り、彼氏なんていません」



 こいつは、何度も私にこれを言わすことにどれだけの喜びがあるというのだ!

 は!!いやもしかして、前回鼻を明かされたのが悔しくて私の傷に塩塗りこんでいるのだろうか。さすがホスト氏、表面上は爽やかにしているけど、これがザ・どSというものなんだろうか。

 「え?ずっと?」
 「……なにか?」

 この話題を続けさせて、こっちのHPをごりごり削ろうなんていう手には乗らないぜ。

 ふん、と私は分りやすく顔をそらした。たとえそれでこの店のお会計全部しろと言われたって構わない。まさか数千万円出せとは言われまい。

 「へえ、そうなんだ」

 ホスト氏は口に手をやって考えている風にした。まあね、馬鹿にしたりおちょくったり、はたまた同情されたりするよりは痛みの少ない反応ではあるな。まあホストなんだからね。

 というか、嫌な話題であることをまず先に察しろ!ご飯食べ終わったらアドバイスしてやろうっと。

 「じゃあ適当に頼むね」
 
 視線をすーーっとメニューに滑らし、私に嫌いなものを聞き、店員を呼べばスマートに注文を終える。慣れてんなあ。そうだよね。こういうお店はきっとアフターとかなんとかで使うんだろうな。

 それにしても車だってすごい。お客さんが買ってくれるみたいなことをテレビで見たことあるけど、実際眼にするとすごい。あんなすごい車をポンッと買ってあげたくなるくらいの価値がある男なんだろうなあ。


 ボーリングやバッティングセンターで打ち負かし、あまつさえ夕飯マックなんて言ったら、お客さんに絞殺されそう……怖い。

 等と、一人で脳内会話を繰り広げていたわけだが、いつの間に目の前には食前酒が置かれ、自然な流れで乾杯となった。

 「わー。これおいしい」
 「でしょ?食前酒だからあんまり強くなくてさっぱりしたほうがいいかと思って」
 「あなたは何を飲んでるの?」
 「俺は、ノンアルコールだから。車だしね」

  ああ、そうかー!というか今日、ホスト氏は休みなのかな?そうだよね、じゃないと車で来たらこの後お店とか無理だろうし。

 「もしかして、今日仕事お休み?」
 「え?ああ、うん、そうそう、お休み」
 「そうなんだ。でもかき入れ時じゃない、年末って」
 「うーん、まあそうでもないよ」


 あれ、なんか仕事の話とかしたくない感じ?微妙にはぐらかす会話を私は切り上げる。そうそう。私だって続けたくない話をされたくないし。さっきみたいにな!
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