NENMATSUラプソディ
 そうして黙り込んだスマホは、しばらくするとまた鳴りだした。さっきは言いすぎたと言ってくるのかと思ったら、また別の友人だった。

 「慧、明日お前忙しい?」
 「いや、明日は何もない。バイトもないし」
 「バイト?お前まだあんなところでバイトしてんのかよ」
 「なかなか楽しいよ」
 「お前にディズニーとか、クッソ似合わないと思うけどな」

 電話の主は同じく高校時代の友人だ。こいつは高校のころからいわゆるイケメンで、女好き。
 それを生かして今はホストになっている。最初聞いた時は驚いたけど、まあ確かに向いているかも。
 
 高校でて、進学しないで就職する方が珍しいうちの学校で、いきなり水商売というのも相当インパクトがあった。
 その水が良かったのか、今や押しも押されぬナンバー2だとか1だとかと聞く。

 俺が呑気に大学生をやりながらバイトしてると言えば、じゃあうちの店手伝えよと、ホストを手伝わされることが何度かあった。

 日雇いの手伝いみたいなものだから、枯れ木も山のにぎわいというか、とりあえず座ってればいいという気楽なもので、その場の空気に合わせて見よう見まねで接客してみたりもした。

 あいつはなんてことないという顔して働いているけど、水商売というのは想像できない部分で相当大変そうだ。
 ほとんど部外者な感じで外から眺めてそう思った。

 人生は経験だなと思って、月に一回か二回、忙しい時にちょっと手伝いに呼ばれるのももう1年くらいだ。だからこの年末に今回も店に出てくれとか言われるのだろうと思って話を聞いた。
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