NENMATSUラプソディ
たどり着いたのは、それほど歩かない場所にある大きなホテルの最上階ラウンジ。
ひえええ。いろいろとひえええええ。
声にならない悲鳴しか出ない。夜景大パノラマで、湾に何艘かの船が浮かび、ああ、今日は満月だったか、波に月明かりが尾を引く。
そんな景色が、落とされた照明の中目の前に広がってるんです。ここはそういうバーなんです。
もちろんメニューに値段なんか書いてないんです。これ一体いくらのモヒートなのか……とメニューを睨んでいると「何飲む?」って、こちらはこんな場所にいるだけで緊張で体がちがちなのに、何だかリラックスしちゃってるホスト氏が笑顔でそう聞く。
さすが、ホスト氏。こういう場所の方がきっと慣れているんだろうなあ。
何飲むかと問われても、万年居酒屋オンリーの私にカクテルの種類なんぞわかるわけもなく、お任せすれば、何とも品のよい水色の飲み物がやってくる。
「わあ、すごい綺麗!」
「優菜はこんな色が好きかなあと思って」
甘ったるい笑顔付きでホスト氏がささやく。すごい!さすが人間観察が仕事のホスト氏!この色が好きだってよくわかったなあ。
「そうそう、南国の意味の色っていうの?ソーダブルーっていうのかなあ。きれいだよねえ。一回行ってみたいんだよね。タヒチとか、ニューカレドニアとか、ガラパゴス諸島とか!!カリブ海も綺麗だろうなあ」
私はソーダブルーの液体の向こうに南国の海を見る。いつか行ってやるぜと思ってコツコツ貯金しているわけだ。
ちらりと横を見れば、ホスト氏の方はクリーム色の飲み物がダウンライトの中に光っている。
「それもノンアルコールなの?」
と、覗き込めばにこりと笑って私の前に差し出す。
「ハイライフっていうんだ」
「へえ」
って名前聞いても全然わからないし。曖昧に濁して私は青色の飲み物に口をつける。
はー!おいしい!!
水商売だけに、飲み物食べ物関係は本当に強いね。なるほどホスト氏のテリトリーじゃ、私は完敗だわ。
こうしてお互いの領域の違いを再認識しながら、ゆっくりとお酒を楽しむ。
話しやすさに乗っかって、いろんなことをとめどなくおしゃべりし「そろそろ行こう?」と再び手を握られて、次はどこに行くのかなあとかのんきに構えていたら、見慣れぬホテルのドアがカードキーで難なく開けられているのを見ているうちに、はたと気づけば部屋の中で、ええ?と思っているうちにホスト氏の影で視界が遮られ、きついアルコールとウォッカの香りが唇に流れ込み、「あれ、ノンアルコール飲んでたんじゃないの?」とかなんとか考えている間に、私は匠の技を見た。
まさにビフォア―アフター。
全身の倦怠感と痛感に身を沈めながら、朝日がさすカーテンの隙間より漏れる光で、やけに立派な天井を見上げる。
いわゆる一つの憧れデートのゴールの正解って、ここまで来るものですか?
ひえええ。いろいろとひえええええ。
声にならない悲鳴しか出ない。夜景大パノラマで、湾に何艘かの船が浮かび、ああ、今日は満月だったか、波に月明かりが尾を引く。
そんな景色が、落とされた照明の中目の前に広がってるんです。ここはそういうバーなんです。
もちろんメニューに値段なんか書いてないんです。これ一体いくらのモヒートなのか……とメニューを睨んでいると「何飲む?」って、こちらはこんな場所にいるだけで緊張で体がちがちなのに、何だかリラックスしちゃってるホスト氏が笑顔でそう聞く。
さすが、ホスト氏。こういう場所の方がきっと慣れているんだろうなあ。
何飲むかと問われても、万年居酒屋オンリーの私にカクテルの種類なんぞわかるわけもなく、お任せすれば、何とも品のよい水色の飲み物がやってくる。
「わあ、すごい綺麗!」
「優菜はこんな色が好きかなあと思って」
甘ったるい笑顔付きでホスト氏がささやく。すごい!さすが人間観察が仕事のホスト氏!この色が好きだってよくわかったなあ。
「そうそう、南国の意味の色っていうの?ソーダブルーっていうのかなあ。きれいだよねえ。一回行ってみたいんだよね。タヒチとか、ニューカレドニアとか、ガラパゴス諸島とか!!カリブ海も綺麗だろうなあ」
私はソーダブルーの液体の向こうに南国の海を見る。いつか行ってやるぜと思ってコツコツ貯金しているわけだ。
ちらりと横を見れば、ホスト氏の方はクリーム色の飲み物がダウンライトの中に光っている。
「それもノンアルコールなの?」
と、覗き込めばにこりと笑って私の前に差し出す。
「ハイライフっていうんだ」
「へえ」
って名前聞いても全然わからないし。曖昧に濁して私は青色の飲み物に口をつける。
はー!おいしい!!
水商売だけに、飲み物食べ物関係は本当に強いね。なるほどホスト氏のテリトリーじゃ、私は完敗だわ。
こうしてお互いの領域の違いを再認識しながら、ゆっくりとお酒を楽しむ。
話しやすさに乗っかって、いろんなことをとめどなくおしゃべりし「そろそろ行こう?」と再び手を握られて、次はどこに行くのかなあとかのんきに構えていたら、見慣れぬホテルのドアがカードキーで難なく開けられているのを見ているうちに、はたと気づけば部屋の中で、ええ?と思っているうちにホスト氏の影で視界が遮られ、きついアルコールとウォッカの香りが唇に流れ込み、「あれ、ノンアルコール飲んでたんじゃないの?」とかなんとか考えている間に、私は匠の技を見た。
まさにビフォア―アフター。
全身の倦怠感と痛感に身を沈めながら、朝日がさすカーテンの隙間より漏れる光で、やけに立派な天井を見上げる。
いわゆる一つの憧れデートのゴールの正解って、ここまで来るものですか?