NENMATSUラプソディ
そのまま髪を乾かし、バスルームを出ると、昨夜脱ぎ散らかされたはずの服が綺麗に畳んでおいてある。ホスト氏、さすがいろいろとすごい。

 しかし恥ずかしいのでここまではやらなくてもいいかとは思うんだけど、こういうものなのだろうか。わからない。

 ホストと正確に遊んだことないし。不正確にはバッティングセンターとか行ったけど!
 私の支度が終わると、ホスト氏はすでにコーヒー一杯をのんびり飲んでいた。

 「あれ?あなたシャワーは?」
 「それより、優菜を家まで送っていくよ。俺は別に時間あるし」
 「え、でも私電車で帰れるし、あなたもう少しゆっくりしていけばいいのに」

 そう言うと、はあっとため息をこぼした。

 「俺、そんなひどい男じゃないから」

 はあ。何がどれがひどいのかひどくないのかよくわからないが、ホスト氏の判断で一人で帰らすのは無しということか。

 「じゃあ、お願いします」

 今から確かに電車で帰って急いで着替えてまた電車というのは疲れるしな。
 というか、何か大切な事が頭から抜け落ちているような気がしているのだけど。まるでエスカレーターに乗せられているみたいに次の階から次の階へ登っていくだけの簡単なお仕事のように動いているけど、なんだろう……。何かが間違っているような……。

 「ほら、優菜急がないと、時間だよ!」

 急かされて、私はあわてて部屋を出た。
 今日の天気やら外の景色やら信号やらで、たわいのない会話をしながら間もなく車は私のアパートへ到着。「会社まで送ろうか?」という申し出はお断りした。

 こんな目立つ車で朝から乗り付けるとか何事感いっぱいだ。そう言えば昨夜は帰りに会社の目の前で捕獲されたのだった。何人かが目撃していたから面倒な話になりそうだなと思い、プラス朝に一騒動とか考えられない。

 「そう……存在感だしておきたかったんだけど」

 存在感が聞いて驚く!存在感なんか十分以上に持ってるでしょうが。それともそれくらいアピールして、お店の売り上げに結びつけようとしているのだろうか。

 「や、でも会社の近くでそういうのは……」
 「会社の近くだから意味があると思うけどね」

 まあそりゃそうだろう。我が社だって小さいながらもそれなりの人数の女子社員がいるからなあ。
 そんなことをぼんやりと考えていたら、怪訝な顔をしてこちらを見るホスト氏。
 え、なんだろう?と、こちらも小首をかしげる。

 お互い、「?」という感じで見つめ合うが、そんなことをのんきにしている場合じゃなかった!

 「あの、ありがとね、送ってくれて!もう時間だし、それじゃ!」
 「……うん、ああ、優菜!」
 「何?」
 「仕事、頑張ってね」
 「うん、ありがとう」
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