NENMATSUラプソディ
 


「っしゃあああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」




 彼女は、片膝ついて右手を何度も引いて、ガッツポーズを繰り出す。

 俺は呆然とスコアボードを見た。うそだろ、これ。

 師走のボーリング場で、彼女はさっきからストライクを連続で繰り出す。軽々と15ポンドのボールを抱え上げ、きれいにストライクを決めていく。

 運動神経は悪くないから、俺だってそこそこいくけど、なんなんだ、あの女。



 スコアが200近くになってるんだけど!



 周りも彼女のストライク連発に気が付き、いつしか見物人も出始める。

 よくあるニットのアンサンブルに膝丈プリーツスカートで、ガンガン投げ込むとか!

 「おい、イケメンしっかりやれよ!」

 野次馬からそんな声を掛けられる。

 3ゲームまでやって俺は疲労した。あり得ない。結局彼女はスコア200出して、後の2ゲームも180とかそのあたり!

 「えー?もう終わり~?」

 と、彼女は勝ち誇ったような顔で、座り込んでる俺を見下ろしながらそう言った。片手に15ポンドのボール持って。

 「じゃあ、次行こう!時間は限られているんだからねー!」

 彼女は意気揚々とボウリング場を後にする。お店のスタッフの拍手に送られ、他のお客さんにも「すごかったよ!」と声が上がった。彼女は片手でそれを受け流しながら、俺をじっと見て言う。

 「私一度あなたみたいなすっごいかっこいい人を、ボウリングで叩きのめしたいと思ってたのよねー!はー!すっきり!」


 良い性格してるよ……。
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