恋架け橋で約束を
中に入るとかなり暗かった。
お化け屋敷だし、当然かな。
でも、孝宏君と手を繋いでいるので、大丈夫。
少し進むと、通路の突き当たりに不気味な人形がいくつも置かれているのに気づいた。
生首や目が取れている人形など……。
たしかに不気味だとは思ったけど、あまり怖さは感じなかったし、ここまではよかった。
だけど―――。
そのあとが問題だった。
何気なく通過しようとした井戸から、突然、白装束の女性が飛び出した。
「きゃーーー!」
私は思わず孝宏君に抱きついてしまう。
うう……クモのときと同じことになってしまった。
孝宏君はそういうのにあまり驚かないタイプなのか、落ち着いた小声で「大丈夫だよ」と言ってくれた。
恥ずかしいので、「ごめんね」と言ってすぐ身体を離したけど、今後もこういうのが続くのかと思うと気が重かった。
どうやら、こういうびっくり系は私は苦手みたい。
「気にしないでね。何度でも抱きついてくれて、いいから」
優しく言ってくれる孝宏君。
そのあとも、びっくり系の仕掛けが来るたびに毎回、孝宏君に抱きついてしまった。
これ、付き合う前だったら、気まずくて大変だったかも。
孝宏君は私を安心させるように、終始微笑んでくれていた。
その手のぬくもりも、すごく私を落ち着かせてくれる。
しかし、そのあとすぐ、今度は大音量と共に、上から生首が飛び出してきて、私は「きゃー」と声を上げ、またしても思いっきり孝宏君に抱きついてしまった。
「大丈夫だよ。僕がついてるから」
全然びっくりしないなんて、孝宏君、すごいなぁ。
「手を繋ぐより、こうしたほうが安心じゃないかな」
言うと、私の腰に手を回してくれる孝宏君。
これは……恥ずかしいけど、この上なく嬉しかった。
いざとなったら、すぐに抱きつきやすいし、常に密着していられるから……。
「ありがとう」
「気にしないで。さぁ、さすがにもうすぐ終わるだろうから、あと一息だよ」
元気付けてくれる孝宏君に身体を寄せながら、ゆっくりと私は足を進めていった。
そして、ようやく出口が前方に姿を現したので、すごくホッとした。
怖かった~。
もう何も仕掛けはなさそうだけど、孝宏君はずっと私の腰に手を回してくれたままだった。
この体勢、すごく恋人っぽくて、いいなぁ。
孝宏君にずっとこうされていたい……。
でも、出口を出ると、人目も多いので、そういうわけにもいかないかな。
「怖かった~」
安堵で力が抜ける私に、孝宏君は「お疲れ様」と言ってくれた。
「ごめんね。実は……僕は楽しかった……。ああいう風に、佐那ちゃんと密着できて……」
私は恥ずかしさに声も出なかった。
「その……不謹慎なんだけど、佐那ちゃんが怖がってくれて、ああやって僕に抱きついてくれたこと……嬉しくて。ああいうシチュエーション、ずっと憧れだったし」
「そうだったんだ。ふふ、それなら、よかった。じゃあ、また今度入ろうよ。ギュッとくっつくためだけに」
私は素直に思ったままを伝えた。
ちょっと大胆すぎる発言だったかな……。
孝宏君は照れている様子だ。
「それなら、ぜひ……。佐那ちゃんと、ずっとああしていたいから」
顔がまたすごく熱くなっていくのを感じる。
孝宏君と一緒にいるだけでドキドキしっぱなしなのに、こんな嬉しいことを言われちゃうと、息苦しいほど顔が火照っちゃう。
「同じ気持ち……嬉しいね。孝宏君、大好き」
私はそう言うと、また手を取った。
孝宏君の大きくて温かい手を。
そのあと、コーヒーカップなど、色々なアトラクションで遊んだ。
孝宏君と一緒だと、どこへ行っても、何に乗っても、考えられないほど楽しかった。
「飲み物を買おっか」
孝宏君が急に私の顔を覗き込んで言う。
「どうして私の喉が渇いてること、分かったの?」
「そりゃ、かなり注意深く、佐那ちゃんのこと見てるし……。それに、何となく分かるよ」
天にも昇る心地。
ずっと見てくれてるんだ……。
嬉しいな。
「ずっと気にかけてもらえて、嬉しい! 孝宏君、大好き」
本当は抱きついたり、キスをしたりしたかったけど、さすがに人混みの中では無理だった。
なので、繋いでいる手をギュッと握る。
また私の髪を撫でてくれる孝宏君。
そして、私たちは飲み物の自販機のほうへ向かう。
私たちはベンチに腰掛けて、飲み物を飲むことにした。
「そのコーヒー、ちょっとだけちょうだい」
孝宏君の飲んでいるコーヒーを指差して私が言った。
「コーヒー、好き?」
「うん。はい、代わりに私のを」
飲んでいるものを交換する。
ちょっと飲んだ後、孝宏君に返した。
コーヒーって、こんなにおいしかったっけ。
きっと、孝宏君が飲んでいたものだからかな、すごく美味しく感じた。
「美味しかった~」
「僕も」
特に理由もないけど、そこで私たちはくすくすと笑いあった。
その後も色々とアトラクションを楽しんでいた私たちだったけど、園内の時計を見て、ハッと気づいた。
「もう四時を回っているんだね。そろそろ戻ろっか。バーベキューの準備があるから」
「そうだよね。まだまだ孝宏君と遊び足りない気分だけど……。また今度、一緒に来ようね」
「もちろん。またお化け屋敷も入ろうね」
爽やかな笑顔で言う孝宏君。
「入ったら、また抱きついちゃうよ。守ってね」
「もちろん!」
胸を張る孝宏君。
あそこ、かなり怖いんだけど……孝宏君とくっつけるなら、また入ってもいいかな。
怖いのは怖いけど。
「じゃあ、出よっか」
孝宏君の言葉に、私も「うん」と頷いた。
そして私たちは手を繋ぎながら、出口へ向かう。
そんなときだった―――。
お化け屋敷だし、当然かな。
でも、孝宏君と手を繋いでいるので、大丈夫。
少し進むと、通路の突き当たりに不気味な人形がいくつも置かれているのに気づいた。
生首や目が取れている人形など……。
たしかに不気味だとは思ったけど、あまり怖さは感じなかったし、ここまではよかった。
だけど―――。
そのあとが問題だった。
何気なく通過しようとした井戸から、突然、白装束の女性が飛び出した。
「きゃーーー!」
私は思わず孝宏君に抱きついてしまう。
うう……クモのときと同じことになってしまった。
孝宏君はそういうのにあまり驚かないタイプなのか、落ち着いた小声で「大丈夫だよ」と言ってくれた。
恥ずかしいので、「ごめんね」と言ってすぐ身体を離したけど、今後もこういうのが続くのかと思うと気が重かった。
どうやら、こういうびっくり系は私は苦手みたい。
「気にしないでね。何度でも抱きついてくれて、いいから」
優しく言ってくれる孝宏君。
そのあとも、びっくり系の仕掛けが来るたびに毎回、孝宏君に抱きついてしまった。
これ、付き合う前だったら、気まずくて大変だったかも。
孝宏君は私を安心させるように、終始微笑んでくれていた。
その手のぬくもりも、すごく私を落ち着かせてくれる。
しかし、そのあとすぐ、今度は大音量と共に、上から生首が飛び出してきて、私は「きゃー」と声を上げ、またしても思いっきり孝宏君に抱きついてしまった。
「大丈夫だよ。僕がついてるから」
全然びっくりしないなんて、孝宏君、すごいなぁ。
「手を繋ぐより、こうしたほうが安心じゃないかな」
言うと、私の腰に手を回してくれる孝宏君。
これは……恥ずかしいけど、この上なく嬉しかった。
いざとなったら、すぐに抱きつきやすいし、常に密着していられるから……。
「ありがとう」
「気にしないで。さぁ、さすがにもうすぐ終わるだろうから、あと一息だよ」
元気付けてくれる孝宏君に身体を寄せながら、ゆっくりと私は足を進めていった。
そして、ようやく出口が前方に姿を現したので、すごくホッとした。
怖かった~。
もう何も仕掛けはなさそうだけど、孝宏君はずっと私の腰に手を回してくれたままだった。
この体勢、すごく恋人っぽくて、いいなぁ。
孝宏君にずっとこうされていたい……。
でも、出口を出ると、人目も多いので、そういうわけにもいかないかな。
「怖かった~」
安堵で力が抜ける私に、孝宏君は「お疲れ様」と言ってくれた。
「ごめんね。実は……僕は楽しかった……。ああいう風に、佐那ちゃんと密着できて……」
私は恥ずかしさに声も出なかった。
「その……不謹慎なんだけど、佐那ちゃんが怖がってくれて、ああやって僕に抱きついてくれたこと……嬉しくて。ああいうシチュエーション、ずっと憧れだったし」
「そうだったんだ。ふふ、それなら、よかった。じゃあ、また今度入ろうよ。ギュッとくっつくためだけに」
私は素直に思ったままを伝えた。
ちょっと大胆すぎる発言だったかな……。
孝宏君は照れている様子だ。
「それなら、ぜひ……。佐那ちゃんと、ずっとああしていたいから」
顔がまたすごく熱くなっていくのを感じる。
孝宏君と一緒にいるだけでドキドキしっぱなしなのに、こんな嬉しいことを言われちゃうと、息苦しいほど顔が火照っちゃう。
「同じ気持ち……嬉しいね。孝宏君、大好き」
私はそう言うと、また手を取った。
孝宏君の大きくて温かい手を。
そのあと、コーヒーカップなど、色々なアトラクションで遊んだ。
孝宏君と一緒だと、どこへ行っても、何に乗っても、考えられないほど楽しかった。
「飲み物を買おっか」
孝宏君が急に私の顔を覗き込んで言う。
「どうして私の喉が渇いてること、分かったの?」
「そりゃ、かなり注意深く、佐那ちゃんのこと見てるし……。それに、何となく分かるよ」
天にも昇る心地。
ずっと見てくれてるんだ……。
嬉しいな。
「ずっと気にかけてもらえて、嬉しい! 孝宏君、大好き」
本当は抱きついたり、キスをしたりしたかったけど、さすがに人混みの中では無理だった。
なので、繋いでいる手をギュッと握る。
また私の髪を撫でてくれる孝宏君。
そして、私たちは飲み物の自販機のほうへ向かう。
私たちはベンチに腰掛けて、飲み物を飲むことにした。
「そのコーヒー、ちょっとだけちょうだい」
孝宏君の飲んでいるコーヒーを指差して私が言った。
「コーヒー、好き?」
「うん。はい、代わりに私のを」
飲んでいるものを交換する。
ちょっと飲んだ後、孝宏君に返した。
コーヒーって、こんなにおいしかったっけ。
きっと、孝宏君が飲んでいたものだからかな、すごく美味しく感じた。
「美味しかった~」
「僕も」
特に理由もないけど、そこで私たちはくすくすと笑いあった。
その後も色々とアトラクションを楽しんでいた私たちだったけど、園内の時計を見て、ハッと気づいた。
「もう四時を回っているんだね。そろそろ戻ろっか。バーベキューの準備があるから」
「そうだよね。まだまだ孝宏君と遊び足りない気分だけど……。また今度、一緒に来ようね」
「もちろん。またお化け屋敷も入ろうね」
爽やかな笑顔で言う孝宏君。
「入ったら、また抱きついちゃうよ。守ってね」
「もちろん!」
胸を張る孝宏君。
あそこ、かなり怖いんだけど……孝宏君とくっつけるなら、また入ってもいいかな。
怖いのは怖いけど。
「じゃあ、出よっか」
孝宏君の言葉に、私も「うん」と頷いた。
そして私たちは手を繋ぎながら、出口へ向かう。
そんなときだった―――。