恋架け橋で約束を
おばあさんの家
家に着くまでの間、孝宏君は色んなことを私に説明してくれた。
孝宏君のことや、おばあさんのことなどを。
孝宏君の実家は隣県にあるらしい。
でも、この街の高校、寒蝉高校に通うために、高校から比較的近い位置にあるおばあさんのおうちに居候させてもらっているそうだ。
また、おじいさんはすでに亡くなっていて、昨年までおばあさんと一緒に住んでいた孝宏君の従姉(いとこ)も、大学進学のために他府県へ行ってしまったらしく、現在はおばあさんと孝宏君の二人暮らしだということだった。
「そこの曲がり角を曲がってまっすぐ行けば、高校が見えてくるよ。今は帰るために、まっすぐ進むけどね」
孝宏君は高校への道を教えてくれた。
今度、その高校へも行ってみようかな。
そんな感じで、色々と孝宏君に教えてもらいながら歩いていると、いつの間にか孝宏君たちの住む家へと到着したみたいだった。
「ここだよ」
孝宏君のおばあさんの家は、大きくて立派だった。
いかにも「昔ながら」という雰囲気で、門や扉にも年季を感じさせる。
「ただいま~」
元気良く言うと、孝宏君は入っていった。
私も続く。
すぐに奥から「おかえり~」という、女性のしわがれた声がした。
「それじゃ、ついてきて」
孝宏君に言われて、奥へ歩いていく。
すると、リビングとおぼしき部屋に、六十歳くらいの女性が座ってテレビを見ていた。
この人がおばあさんね。
「おやおや、彼女を紹介してくれるのかい? ようやくあんたにも恋人が……。しかも、可愛い子だし、本当によかったねぇ」
「ち、ちがっ」
慌てる孝宏君だったけど、すぐに私についておばあさんに説明してくれた。
「そうかい、大変なんだねぇ! さっきは勘違いしてしまって、ごめんねぇ」
おばあさんはすごく同情してくれたみたいだった。
「うちでよければ、いつまでもいてくれていいよ」
「えっ?!」
あまりにもあっさり言われたので、私は驚いた。
「でも私、お金も全く持っていなくて」
「そんなのいいからさ。こんな何もない家でよければ、あたしも孝宏も歓迎するよ」
「あ、ありがとうございます!」
私はお辞儀をした。
思わず目が潤んでしまった。
こんなにすんなり受け入れてもらえるなんて、思ってなかったから。
「持ち物、あまり持ってないんだってねぇ。カバンとかコップとかは、うちの孫娘が置いていったのを使ってもらうからいいとしても、服とか歯ブラシとかは自分のが欲しいだろうし、これで買ってきてね」
おばあさんはそう言うと、奥から財布を取ってきてくれた。
「ええっ?! そんな……申し訳ないですよ」
「気にしなくていいんだよ。ずっと同じ服でいるわけにもいかないし、色々と入用でしょ。孝宏、買い物についていってあげてね。この財布は預けとくから」
そう言うと、おばあさんは孝宏君に財布を渡した。
「うん、了解。それじゃ、買い物に行こっか」
「え、あ、はい。でも、あのっ」
私はおばあさんと孝宏君に向かって言った。
「しっかり、家事はお手伝いしたいと思います。色々と教えてくださいね」
「あらあら、よくできた娘さんだねぇ。孝宏の嫁に欲しくなってしまうねぇ」
「ちょっ! ばあちゃん余計なこと言わないでいいって!」
おろおろする孝宏君。
私も恥ずかしくて顔が熱くなった。
「それじゃ、僕もちょっと財布を取ってくる。行ってきます!」
孝宏君はそう言うと、逃げるように立ち去った。
二階へ上がる足音が聞こえている。
「あの……色々とありがとうございます。行ってきますね」
「気をつけていってくるんだよ」
「はい!」
リビングを出ると、ちょうど階段から孝宏君が降りてきてくれた。
「お待たせ。それじゃ、行こう」
「お願いします」
そして孝宏君と私は、買い物へと出かけたのだった。
孝宏君のことや、おばあさんのことなどを。
孝宏君の実家は隣県にあるらしい。
でも、この街の高校、寒蝉高校に通うために、高校から比較的近い位置にあるおばあさんのおうちに居候させてもらっているそうだ。
また、おじいさんはすでに亡くなっていて、昨年までおばあさんと一緒に住んでいた孝宏君の従姉(いとこ)も、大学進学のために他府県へ行ってしまったらしく、現在はおばあさんと孝宏君の二人暮らしだということだった。
「そこの曲がり角を曲がってまっすぐ行けば、高校が見えてくるよ。今は帰るために、まっすぐ進むけどね」
孝宏君は高校への道を教えてくれた。
今度、その高校へも行ってみようかな。
そんな感じで、色々と孝宏君に教えてもらいながら歩いていると、いつの間にか孝宏君たちの住む家へと到着したみたいだった。
「ここだよ」
孝宏君のおばあさんの家は、大きくて立派だった。
いかにも「昔ながら」という雰囲気で、門や扉にも年季を感じさせる。
「ただいま~」
元気良く言うと、孝宏君は入っていった。
私も続く。
すぐに奥から「おかえり~」という、女性のしわがれた声がした。
「それじゃ、ついてきて」
孝宏君に言われて、奥へ歩いていく。
すると、リビングとおぼしき部屋に、六十歳くらいの女性が座ってテレビを見ていた。
この人がおばあさんね。
「おやおや、彼女を紹介してくれるのかい? ようやくあんたにも恋人が……。しかも、可愛い子だし、本当によかったねぇ」
「ち、ちがっ」
慌てる孝宏君だったけど、すぐに私についておばあさんに説明してくれた。
「そうかい、大変なんだねぇ! さっきは勘違いしてしまって、ごめんねぇ」
おばあさんはすごく同情してくれたみたいだった。
「うちでよければ、いつまでもいてくれていいよ」
「えっ?!」
あまりにもあっさり言われたので、私は驚いた。
「でも私、お金も全く持っていなくて」
「そんなのいいからさ。こんな何もない家でよければ、あたしも孝宏も歓迎するよ」
「あ、ありがとうございます!」
私はお辞儀をした。
思わず目が潤んでしまった。
こんなにすんなり受け入れてもらえるなんて、思ってなかったから。
「持ち物、あまり持ってないんだってねぇ。カバンとかコップとかは、うちの孫娘が置いていったのを使ってもらうからいいとしても、服とか歯ブラシとかは自分のが欲しいだろうし、これで買ってきてね」
おばあさんはそう言うと、奥から財布を取ってきてくれた。
「ええっ?! そんな……申し訳ないですよ」
「気にしなくていいんだよ。ずっと同じ服でいるわけにもいかないし、色々と入用でしょ。孝宏、買い物についていってあげてね。この財布は預けとくから」
そう言うと、おばあさんは孝宏君に財布を渡した。
「うん、了解。それじゃ、買い物に行こっか」
「え、あ、はい。でも、あのっ」
私はおばあさんと孝宏君に向かって言った。
「しっかり、家事はお手伝いしたいと思います。色々と教えてくださいね」
「あらあら、よくできた娘さんだねぇ。孝宏の嫁に欲しくなってしまうねぇ」
「ちょっ! ばあちゃん余計なこと言わないでいいって!」
おろおろする孝宏君。
私も恥ずかしくて顔が熱くなった。
「それじゃ、僕もちょっと財布を取ってくる。行ってきます!」
孝宏君はそう言うと、逃げるように立ち去った。
二階へ上がる足音が聞こえている。
「あの……色々とありがとうございます。行ってきますね」
「気をつけていってくるんだよ」
「はい!」
リビングを出ると、ちょうど階段から孝宏君が降りてきてくれた。
「お待たせ。それじゃ、行こう」
「お願いします」
そして孝宏君と私は、買い物へと出かけたのだった。