恋架け橋で約束を

バーベキューを終えて

 やがて、食べ物がなくなって、バーベキューは終了した。



 みんなで後片付けをした後、おばあさんの挨拶により、その場で解散ということに。
 解散といっても、おばあさん、孝宏君、雪乃さん、それに私の四人は、どこかに帰っていくわけじゃないけど。
 智君、美麗さん、崎山君、そして雪乃さんのお友達お二人は、満足げな表情で帰っていった。
 バーベキューは大成功、かな。
 私にとっては何より、美麗さんとしっかりお話ができて、仲良くなれたことが大きな収穫だったと思う。
 ちょっと疲れちゃったけど、すごく楽しかったな。



「佐那ちゃん、お疲れ様。それじゃ、僕の部屋で休憩しない?」
 孝宏君が言ってくれた。
「うん、もちろん!」
「佐那ちゃん、お疲れのようだね。ゆっくり休むといいよ」
 おばあさんが私の顔を見て、言ってくれた。
「はい、ありがとうございます」
「ゆっくりね~。ああ、そうそう! 佐那ちゃん。私の今のお部屋は、二階廊下の突き当たりだから、いつでも遊びに来てね! しばらくはここでおばあちゃんと一緒にテレビ見てるし、それに明日夜にはもう帰るから、今週はあまり機会がないかもしれないけど」
「分かりました。機会があれば立ち寄るね。それでは」
 私は雪乃さんに答えた後、孝宏君の後に続いて階段を上った。



 それから、孝宏君のお部屋で、のんびりおしゃべりをして過ごした。
 孝宏君は、趣味の話をするとき、特に目がキラキラしている。
 そして、そんな孝宏君の様子を見ると、たまらなく幸せになる私。



 私たちは順番にお風呂や歯磨きなどを済ませ、再び話し込んだ。



 一緒にいる時間はあっという間に過ぎてしまう。
 早くも、もう寝る時間だ。
「もう寝なくちゃいけない時間だね」
 名残惜しい気持ちをこらえて、私が言った。
 孝宏君も寂しげな表情だ。
「楽しい時間は、あっという間に過ぎちゃうね。でも、また明日もいっぱいおしゃべりしようよ。佐那ちゃん、今日もありがとう」
「こちらこそ、ありがとうね」
「そういえば、明日は朝からライブハウスに行かないとね。日曜だから、ずっと一緒に過ごせるよ」
「はい、すごく楽しみ!」
 わくわくしてきた。
 孝宏君と一日中、一緒にいられるなんて……。
 思わずスキップでもしたい気分。
「僕も楽しみ。楽しみすぎて、今晩、ちゃんと寝られるかな」
 笑顔で言う孝宏君に、「ちゃんと寝ないと駄目だよ」と私は言った。
 すると、またギュッと抱きしめてくれる孝宏君。
 何度されても、そのたびにドキドキする。
 慣れてくるような類のものじゃないみたい。
 孝宏君の胸に耳を当てると、孝宏君もドキドキしてくれているのが分かった。
 すごく嬉しい。

「おやすみ、じゃあ、また明日ね」
 身体を離して、軽く手を振ってくれる孝宏君。
 おやすみの挨拶を返した後、後ろ髪を引かれる思いで、私は自分の部屋へと戻った。



 部屋で一人になると、途端に心細くなる。
 ……そういえば、おばあさんが何も言っていないことを考えると、まだ警察からの連絡が何もないのだろう。
 おばあさんのことだし、もし何か進展があれば、すぐに知らせてくれるはず。
 私、大丈夫かな……。

 記憶を取り戻して、早く元通りの私に戻りたいという強い思いがあるのに、それに反するような思いもまた、私の中に生まれていた。
 記憶を取り戻したら……また、元々好きだった人への恋へと戻る?
 そんなことあり得ない……。
 今の私にとっては、孝宏君以外の相手との恋は、考えられなかった。
 もう孝宏君以外の人に恋する自信は全くないし、恋いしたいとも思わない。
 孝宏君さえいてくれれば……。

 そんなことを考えていてなかなか寝付けず、ようやく眠りにつくことができたのは、空が白み始めた頃だった。



 また私は夢を見た。
 私がいたのは、あの秘密の場所。
 すでに薄暗くなっているあの場所にて、相変わらず一人ぼっちで私は立っていた。

 すぐに、孝宏君を探す。
 しかし、どれだけあたりを見回してみても、孝宏君の姿はなかった。
 思わず涙が出てくる。
 どこへ行っちゃったの……?
< 41 / 60 >

この作品をシェア

pagetop