恋架け橋で約束を
海へ
おばあさんと三人、楽しく食事をとったあと、お皿洗いが終わってから孝宏君が言った。
「これから、海へ行かない? 一昨日、室内プールで、あまり泳げなかったでしょ」
そういえば、たしかに。
「賛成~! じゃあ、準備してこようね」
すると、そばにいるおばあさんが嬉しそうに笑う。
「ばあちゃん、何だよ」
困ったような表情の孝宏君。
「仲が良くて、あたしも嬉しいんだよ。あと何年かしたら、孫の顔が見られそうね」
「な、何言って……」
孝宏君の顔は真っ赤だ。
私の顔色も同じだと思う。
でも……おばあさんに認めてもらえて、嬉しいな。
「じゃ、じゃあ、僕らは準備があるから」
「はいはい、気をつけていっておいで」
おばあさんはにこにこしたままだ。
羞恥心を押し殺して、私は孝宏君の後から階段を上って、部屋へと向かった。
向こうで着替える手間を省くため、あらかじめ水着を服の下に着ておいた。
そして、準備を終えると、すぐに私は廊下へ出る。
そこには、すでに準備を終えたらしい孝宏君が待ってくれていた。
「お待たせ」
「いえいえ、それじゃ、行こうか」
私たちは階下に降り、おばあさんに挨拶をしてから家を出た。
電車から降りて、駅を出たところで、孝宏君が言った。
「もうすぐだよ。徒歩で十五分程度だったはず」
「案内よろしくね」
私は孝宏君の後ろについていった。
やがて―――。
道の向こうに、海がその姿を私たちの前に現した。
それまでもすごくわくわくしていたんだけど、私の気分はそこからさらに上昇していく。
「海だ~!」
思わず声をあげちゃった。
「さぁ、行こう!」
孝宏君も嬉しそうに言うと、突然駆け出した。
「あ、ずる~い。置いてかないで~」
すると、急に立ち止まる孝宏君。
「やっぱり一緒に行こう」
そう言って手を出してくれたので、私はその手をしっかり握る。
やっぱり優しい……。
私たちは手を繋ぎながら、浜辺を目指して歩き出した。
浜辺に到着した私たちの周りには、すでに人がけっこういた。
しかし、海も浜辺も面積が広いおかげで、プールのときのような窮屈さはない。
私たちはすぐに水着姿になった。
孝宏君の水着は、プールのときと同じもののようだ。
私は、プールのときはビキニだったので、今回はワンピース水着のほうにしてみた。
「その水着もすごく似合ってるね。独り占めにしたいくらい、可愛いよ」
私の心臓は跳ね上がった。
「孝宏君が、独り占めしてくれていいよ」
そう言って、すごく恥ずかしいけど、そっと孝宏君に寄り添ってみた。
ドキドキが止まらない。
「ありがとう」って言って、そっと身体に手を回してくれる孝宏君。
同じ気持ちでいてくれているのが伝わってきて、嬉しい。
それから私たちは準備運動を済ませると、波打ち際へと向かって歩き出した。
照りつける夏の日差しが、浜辺の砂を熱し続けているおかげで、裸足の足裏が熱い。
それを我慢しつつ歩いて、孝宏君と共に波打ち際にやってくると、波で濡れた砂は冷たくて心地よく感じられた。
「きゃっ、冷たい!」
「もうちょっと先まで行ってみようよ」
孝宏君はそう言うと、私の手を引いたまま、腰まで水に浸かるあたりまで、ざぶざぶと海に入っていく。
「気持ちいい~!」
またつい声をあげてしまった。
「ほんとだね」
孝宏君も気持ち良さそうだ。
冷たい水の中でも、孝宏君の手のぬくもりは、かすかに残ったままのように感じられる。
それだけで幸せな気分になれた。
「手、つないだままでお願いね」
孝宏君と少しの時間でも、離れていたくなくて。
「もちろん!」
孝宏君は握る手に、少しだけ力をこめてくれた。
それからしばらく、泳いだり、水を掛け合ったりして遊んだ後、私たちは浜辺へ戻って休憩することにした。
「ジュース買ってくるね。何がいい?」
孝宏君がこちらを向いて聞く。
「一緒に行きたい」
「でも、疲れてない?」
「大丈夫。離れ離れになりたくない」
孝宏君はちょっと恥ずかしそうに、「それは僕も一緒」と言ってくれた。
「じゃあ、一緒に行こう」
そう言って立ち上がると、手を差し出してくれる孝宏君。
私はその手を夢中で握った。
ジュースを買ってきて、二人座って飲んだ後は、のんびりおしゃべりをした。
いつしか太陽は雲に隠れていたので、少し涼しくなった気がする。
「じゃあ、また海に入ってみる?」
孝宏君の言葉に、すぐに私は賛成し、二人で海へと再び向かった。
「いつの間にか、もう四時を回ってるんだね」
水に入ってしばらく遊んでいたら、孝宏君が遠くを見て言った。
視線の先には、街灯のようなものに取り付けられた時計がある。
孝宏君の言う通り、時計は四時五分を指していた。
「じゃあ、そろそろ帰り支度をしよっか」
心なしか、寂しげな様子で言う孝宏君。
私も寂しい……。
もっとここで遊んでいたいのに。
でも、雪乃さんとの花火の約束や、夕飯のことを思い出し、我慢することに。
「そうだね。また連れてきてね」
「うん、もちろん」
そして私たちは、少し離れた場所にあるシャワーを浴び、簡易更衣室にて着替えてから、海を後にした。
「これから、海へ行かない? 一昨日、室内プールで、あまり泳げなかったでしょ」
そういえば、たしかに。
「賛成~! じゃあ、準備してこようね」
すると、そばにいるおばあさんが嬉しそうに笑う。
「ばあちゃん、何だよ」
困ったような表情の孝宏君。
「仲が良くて、あたしも嬉しいんだよ。あと何年かしたら、孫の顔が見られそうね」
「な、何言って……」
孝宏君の顔は真っ赤だ。
私の顔色も同じだと思う。
でも……おばあさんに認めてもらえて、嬉しいな。
「じゃ、じゃあ、僕らは準備があるから」
「はいはい、気をつけていっておいで」
おばあさんはにこにこしたままだ。
羞恥心を押し殺して、私は孝宏君の後から階段を上って、部屋へと向かった。
向こうで着替える手間を省くため、あらかじめ水着を服の下に着ておいた。
そして、準備を終えると、すぐに私は廊下へ出る。
そこには、すでに準備を終えたらしい孝宏君が待ってくれていた。
「お待たせ」
「いえいえ、それじゃ、行こうか」
私たちは階下に降り、おばあさんに挨拶をしてから家を出た。
電車から降りて、駅を出たところで、孝宏君が言った。
「もうすぐだよ。徒歩で十五分程度だったはず」
「案内よろしくね」
私は孝宏君の後ろについていった。
やがて―――。
道の向こうに、海がその姿を私たちの前に現した。
それまでもすごくわくわくしていたんだけど、私の気分はそこからさらに上昇していく。
「海だ~!」
思わず声をあげちゃった。
「さぁ、行こう!」
孝宏君も嬉しそうに言うと、突然駆け出した。
「あ、ずる~い。置いてかないで~」
すると、急に立ち止まる孝宏君。
「やっぱり一緒に行こう」
そう言って手を出してくれたので、私はその手をしっかり握る。
やっぱり優しい……。
私たちは手を繋ぎながら、浜辺を目指して歩き出した。
浜辺に到着した私たちの周りには、すでに人がけっこういた。
しかし、海も浜辺も面積が広いおかげで、プールのときのような窮屈さはない。
私たちはすぐに水着姿になった。
孝宏君の水着は、プールのときと同じもののようだ。
私は、プールのときはビキニだったので、今回はワンピース水着のほうにしてみた。
「その水着もすごく似合ってるね。独り占めにしたいくらい、可愛いよ」
私の心臓は跳ね上がった。
「孝宏君が、独り占めしてくれていいよ」
そう言って、すごく恥ずかしいけど、そっと孝宏君に寄り添ってみた。
ドキドキが止まらない。
「ありがとう」って言って、そっと身体に手を回してくれる孝宏君。
同じ気持ちでいてくれているのが伝わってきて、嬉しい。
それから私たちは準備運動を済ませると、波打ち際へと向かって歩き出した。
照りつける夏の日差しが、浜辺の砂を熱し続けているおかげで、裸足の足裏が熱い。
それを我慢しつつ歩いて、孝宏君と共に波打ち際にやってくると、波で濡れた砂は冷たくて心地よく感じられた。
「きゃっ、冷たい!」
「もうちょっと先まで行ってみようよ」
孝宏君はそう言うと、私の手を引いたまま、腰まで水に浸かるあたりまで、ざぶざぶと海に入っていく。
「気持ちいい~!」
またつい声をあげてしまった。
「ほんとだね」
孝宏君も気持ち良さそうだ。
冷たい水の中でも、孝宏君の手のぬくもりは、かすかに残ったままのように感じられる。
それだけで幸せな気分になれた。
「手、つないだままでお願いね」
孝宏君と少しの時間でも、離れていたくなくて。
「もちろん!」
孝宏君は握る手に、少しだけ力をこめてくれた。
それからしばらく、泳いだり、水を掛け合ったりして遊んだ後、私たちは浜辺へ戻って休憩することにした。
「ジュース買ってくるね。何がいい?」
孝宏君がこちらを向いて聞く。
「一緒に行きたい」
「でも、疲れてない?」
「大丈夫。離れ離れになりたくない」
孝宏君はちょっと恥ずかしそうに、「それは僕も一緒」と言ってくれた。
「じゃあ、一緒に行こう」
そう言って立ち上がると、手を差し出してくれる孝宏君。
私はその手を夢中で握った。
ジュースを買ってきて、二人座って飲んだ後は、のんびりおしゃべりをした。
いつしか太陽は雲に隠れていたので、少し涼しくなった気がする。
「じゃあ、また海に入ってみる?」
孝宏君の言葉に、すぐに私は賛成し、二人で海へと再び向かった。
「いつの間にか、もう四時を回ってるんだね」
水に入ってしばらく遊んでいたら、孝宏君が遠くを見て言った。
視線の先には、街灯のようなものに取り付けられた時計がある。
孝宏君の言う通り、時計は四時五分を指していた。
「じゃあ、そろそろ帰り支度をしよっか」
心なしか、寂しげな様子で言う孝宏君。
私も寂しい……。
もっとここで遊んでいたいのに。
でも、雪乃さんとの花火の約束や、夕飯のことを思い出し、我慢することに。
「そうだね。また連れてきてね」
「うん、もちろん」
そして私たちは、少し離れた場所にあるシャワーを浴び、簡易更衣室にて着替えてから、海を後にした。