恋架け橋で約束を

秘密の場所へ

 孝宏君と一緒に水遊びをした川は、なぜか川幅が細くなっていた。
 王冠を拾った場所には、飛び石風の石は見当たらない。
 あの王冠もほんと、どこ行っちゃったの……?
 孝宏君との思い出まで消えてしまったみたいで、泣きそうになってきた。
 それでも気持ちを奮い立たせて、私は秘密の場所へと向かう。



 道はどんどん山深くなる。
 でも、孝宏君に教えてもらった目印は、はっきり分かるものも幾つかあった。
 目印の幾つかは行方不明で、しばし山道をさまよう羽目になったけど……。
 私は必死の思いで、目印を探し回った。
 目印がこうして幾つか実在していること、そして私の着ているワンピースのこと、これらがすでに孝宏君の存在が夢なんかじゃなく現実だってことを表してくれてはいたけど……もっともっと、はっきりとした確証が欲しくて。

 あそこ、あの秘密の場所に、孝宏君と一緒に埋めた缶があれば……そうすれば……あれは夢じゃなく、現実だったって分かる。
 あの中に……私たちは紙を入れたんだ!
 はやる気持ちを抑えるのに苦労しつつ、私は目印を探して歩いた。
 そして―――。

 あたりが薄暗くなり始めた頃、やっとたどり着いた。
 秘密の場所に……。

 周りにホタルの姿はあるにはあったけど、孝宏君と一緒に来たときほどの数は飛んでなかった。
 もうちょっと暗くならないと増えないのかな。
 そんなことより………あの缶を!
 そして、私はそれほど時間をかけずに、見つけることができた。
 あの目印の石たちを……!

 手が汚れるのも厭わず、石を少しどかしてから、すぐに私はそこを掘った。
 すると、すぐに指先が堅いモノに触れる。
 これこれ!
 この金属っぽいこの感じ!
 間違いない!



 掘り出してみると、やっぱりあのタイムカプセルの缶だった。
 ただ、缶の表面がかなり汚れているのが、すごく気になったけど。
 何だか、かなり錆(さ)び付いているみたい。
 でも、重要なのは中身だ。
 私は手早く蓋を開けた。
 中には―――。

 そこには紙が二十枚以上も入っていた。
 いつの間に、こんなに……。
 不思議に思った私は、すぐにそれぞれの紙を順番に見ていくことにした。

 一番下のは……日付と……孝宏君と私の名前が書いてあった。
 私たちの名前の上に、日付が書かれている。
 二十年前の七月三日と―――。
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