bitter sweets
 俺と夏妃は出会ったころから気が合って、すぐに仲良くなった。

 そのころから夏妃はへビースモーカーなんだけど、タバコが嫌味にならないくらい良く似合った。
 きつい目元は笑うと嘘みたいに優しくなる。華奢だし、ずいぶんちっさい女の子なんだけど、仕事してるときとか一緒にいてもそういうちいささを感じない。
 すっと背筋を伸ばして立ってるとこなんかほんと男前でかっこいい。
 髪なんてショートカットだし。
 まあ俺の方がかっこいいけどそれはとりあえず置いとく。

 一人暮らしの夏妃の家に入りびたりになったのはいつからだったっけなあ。
 俺はそうして夏妃にすっかりなついていながら、次々と俺の前に現れる女の子たちと一騎当千?みたいな。
 でも、新しく彼女が変わるたび、それが夏妃にばれるたび、俺はすぐに彼女たちを切ってきた。だって夏妃は、俺に彼女がいる間、夏妃の家に帰ることを嫌がるんだもーん。


 それがどういうことかなんて、考えた事もなかったんだけど。


 人から真剣に思われたことってある?

 俺はね、今の彼女がすごく真剣に俺を好きで実はちょっと怖い。

 妹の友達だし女子高生だし、適当にあしらったり時々脅かしていればそのうち飽きちゃうだろうと思ってたのに、まっすぐ俺の目を見て俺を好きだというんだよね。

 俺はその子と付き合うちょっと前から、なんかよく分からない飢餓感というかそういうのが消えなくなってて、女の子新しくすればいいのかなあとか思ってたんだけど、どうもそうじゃないみたいで、でもなんだかわからなくてその中で、晴香ちゃんが俺を好きという度に、迫られるその度に、その目を見る度に、夏妃が浮かぶ。


 それで俺は昨日の夜、いったいこれが何なのかがガッツリわかってしまった。


 俺が欲しいのは女の子としての夏妃だった。

 それに気が付くまで五年もかかった。夏妃が悪い。少しも俺を意識してくれないんだから。ちょっとでもそういうのが見えたら、俺は絶対食いついてたね。
 それくらい夏妃さんは素敵な人なんです、キャッ。気が付いたらついたで、恐るべし5年分の飢餓感。
 犬なのにずっと鳥のエサ食ってたのわかっちゃったというか。
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