bitter sweets
 

 「聞きました?小寺さんの話!」


 いやに楽しそうに鏡越しに私を見上げる金髪の男、柴田君。
 白いジャージの上下がいかにもガラが悪い。

 けれど本人はいたって普通の若者で、そういう服装もうやめれば?と何度か忠告しているんだけど(度重なる金髪も)今更普通のかっこするのが恥ずかしいとか何とか。

 もっと落ち着いた髪色に染めなおし、まともな服を着せればかなりいい男で通るはずなんだけど、連れてる女の子も金髪にジャージの上下とか私にはちょっとわからないセンス。

 まあいいんだけど。

 今日もきれいに金髪に染め上げ、仕上げにシャカシャカと形を整えていれば、もう我慢できないといった具合に小寺の話になった。

 「んー?またくだらないんでしょ?」
 「今度の小寺さんの彼女、女子高生らしいですよ!もうあれですよ!『俺は女子高生には手を出さない!キリッ!』とかってかっこつけてたくせに!!」
 「女子高生って妹が女子高生じゃん、小寺。それで妹に嫌われたか」
 「いやこれが!めっちゃ笑えるんですけど、小寺さんの妹、現場に遭遇しちゃったらしくって!」
 「現場―?」
 「やってるところですよ!すげえおかしい!!」
 「……アホだ」
 「まあでも、小寺さんの気持ちもわからなくないかなあ。ものすごいかわいい子なんですよ、彼女。あんな子に迫られるとか、うらやましすぎる!」
 「そんなかわいい子なの?」
 「小寺さんのお客さんらしいですよ」
 「お客に手を出すなっての」
 「いや、もうこれね、今年一番でしょ!さすが小寺さんだなあ。年末に面白い話を身をもって投下とか!」
 
 昨日の小寺が目に浮かぶ。
 ほんと馬鹿だなあ。なんでそんなことになるんだか。最後にタオルで髪を落とし、はいどうぞと鏡を促す。

 「おっし!今日もありがとうございました!」
 「いいえ、こちらこそ。来年もよろしくね、柴田君。でもたまには小寺の店に行ってあげなよ」
 「小寺さんが俺に来るなっていうんですよ。俺がガラが悪いから、自分の女子の人気が落ちるって」
 「なーに言ってんだかいい年して」
 「ま、俺も協力しておとなしくしときます。女子高生とラブラブな小寺さんなんてちょっと見ものですからね~」

 柴田君はそう言って、機嫌よく手を振って帰っていった。

 やれやれ。私は肩をぐりぐりと回す。
 彼女が女子高生じゃ確かに家にはいけないだろうけど。
 私はため息をつく。

 彼女ができるたびに傷んだこの胸も、相手が女子高生と言われてなんだか微妙なうずき方だ。どれだけ本気なんだろうか。

 本気の度合いを低く見積もってしまう自分にため息をついた。



 
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