bitter sweets
 「じゃーん!たこ焼き買ってきたよ。でも夏妃がなかなか開けてくれないから冷めちゃった。レンジ貸して」

 「どーっぞ」

 「なんだよう、夏妃―。怒るなようう。部屋余ってるんだしいいじゃん」
 「余ってませんー。ところで、聞いたわよ、妹さんに避けられてる理由」

 ぽろりと口からたこ焼きの楊枝を落とす、小寺。

 「え、誰から?」
 「柴田君」 
 「くそ、柴田め余計な事を」
 「まあ、なんていうの、妹さんだってもう高校生なんだし、時間が解決するんじゃないの。今は避けててもしばらくすれば元通りじゃない?」
 「柴田からなんて聞いた?」
 「なんてって。その、現場を妹さんに見られたとか何とか」

 「現場って?」

お茶を入れようと立ち上がってやかんを火にかけながら出した話の、どうでもいい部分に食いついてきた小寺を振り返ると、たこ焼きに集中してると思いきや、いやに真剣な目でこちらを見ていた。

 「だから、現場といったら現場だよ」
 「犯罪現場かそこは」
 「似たようなものでしょうよ。はいお茶。高校生なんだから、今度は大事にしなさいよ」

湯呑で両手を温めながら、小寺は湯気越しに私をじっと見る。

 「なによ」


 「はあああ。あのね、俺手出してないよ」
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