【完】キミと生きた証
第1章:初雪と君
ある雪の日
授業中、和歌を詠みあげる先生の声は今日も穏やか。
あたしは1-Bの教室の窓から外を眺めて、天から舞い散る今年最初の雪を目で追ってた。
教科書をめくる音がそこらじゅうで聞こえたから、あたしも急いで教科書をめくる。
「このように、決してしてはいけない恋が背景にあります。彼女は嘆きながらも燃えるような恋心を謳いました。ここの助動詞「む」の活用は…」
万葉集。
何百年も前のひとがこんな時代まで残すほど燃えちゃった本気の恋。
してはいけない本気の恋なんて、可哀想だなって思った。
小学生みたいな感想になっちゃうのは、あたしはまだ恋をしたことがないからだと思う。