【完】キミと生きた証
春の桜
Side 霧沢ちとせ
***
トイレから戻ってきたら、瞬が神社の前で手を合わせてた。
長いことそのまま動かなくて。
・・・何をお参りしてるんだろう?
瞬はあたしに気づいてお参りをやめると、
「ちとせ、お茶でも飲むか?」
って、自販機の方に行った。
緑茶の缶を両手で握って、あたしは瞬を見つめた。
「瞬さっき、お参りしてたの?」
「あぁ、そう。新年のあいさつ。」
そうだとしたらすごく長い挨拶だった。
お参りしてるときの瞬の顔、すっごくすっごく真剣だった。
目をぎゅっと閉じて、何かにすがるような、
まるで、「困ったときの神頼み」・・・。
瞬は優しい。
きっと、神様に頼むとしたら、あたしの病気のことだよね。
・・・どんな気持ちにさせてるんだろう。
こうやって笑ってる間も、瞬は悩んでるのかな。
あたしは、一体瞬に何ができるんだろう・・・。