【完】キミと生きた証
次の日、瞬はお見舞いに来てくれた。
「なんだ、いつもよりは顔色いいな。」
「そっかなぁ。よかった。」
褒められた。
酸素ずっとつけてたのがよかったかな。
「膝、ごめんな。受け止めてやれなくて・・・」
両ひざの青あざは見事に広がってて、ゾンビみたい。
「抱きとめてくれてほんとに助かったよ。じゃなきゃ顔まで、すごかったかもしれないもん。」
「・・そ。・・楽にしてていいよ。座ってる方が楽か?」
「うん。・・・あ、でも、手・・・ほしい。」
瞬の手を握って、座椅子に座った。
「・・・瞬、あたしね。検査入院するんだ。」
「いつ?」
「体調次第だけど6月のおわりかなぁ。3泊くらいなんだけど。もし、そのまんま入院って・・・なったら。会えなくなる。」
ぎゅっと手の平をにぎると、瞬の大きな手が握り返した。
「・・・なってもならなくても、毎日会いに行く。」
「遠いんだよ。前の大きい方の病院だもん」
「近えし。」
「会えなくても、電話とか・・・したい。してもいい?」
会っても沈黙が始まっちゃうあたしたちだけど。
電話も苦手で数回しかしたことないあたしたちだけど。
「電話でもなんでもする。つうか、会いに行かせろ。」
瞬の低い声が胸に響いた。
「・・・ありがと。ついでにもういっこ、お願いしていい?」
「なんだ?」
「夏になったら、夏祭りに・・・行きたい。」
もしも入院してたとしても、外泊許可をとって、行きたい・・。
「うん。わかった、約束な。」
あたしがにこっと笑うと、頭を撫でた。
「検査って・・カテーテル?手術するのか?」
「そう。よく知ってるね。さすがだなぁ。」
「そっか・・・。検査頑張ったら、ご褒美なにがいい?」
「えぇ?ご褒美くれるの?」
「当たり前だろ。」
えぇっと、なんにしよう。
「・・・ぎゅーって抱きしめて、キスしてほしい。」
「・・・それと、あとは?」
「それだけで十分・・。」
瞬は不服そうだったけど、微笑したあたしを、優しい顔で見つめた。