【完】キミと生きた証
約束の夏祭り
Side 霧沢ちとせ
***
今日は約束の夏祭り。
学校のすぐそばにある河川敷であるんだ。
浴衣は着たいけど、きっと疲れるからやめた。
瞬が迎えに来てくれて、あたしはようやく家を出た。
「いってきます。」
「いってらっしゃい。瞬くん、よろしくね。」
「はい。いってきます。」
今日の瞬、なんか大人っぽい。
ぴったり細めのチャコールグレーのVネックにジーパン。
あとはアクセサリーがあるだけで、シンプルな服。
スタイルいいからかっこいいなぁ。
髪もトップはふわふわ、流した前髪もなんか・・・見惚れちゃう。
「ん?どうした?」
「ううん。今日も、かっこいいなぁって・・思って。」
「・・・なんだソレ。」
あたしが瞬の手を握ると、
「逆。」
って言って車道側に移って、反対の手を繋ぐの。
あたしたちの間には沈黙が流れて、
でもそれが嫌じゃない。
「夏祭り・・・去年も行ったか?」
「ううん。去年は入院してたんだ。」
「そうか。俺も行ってねぇけどな。」
「なんで?」
「行く相手いねえし・・。男ばっかで行ってもどうせあいつらナンパしかしねえしな。」
「あははっ。そっか。」
去年のあたしは、病院から花火の音だけ聞いてた。
窓を開けてみつめている人さえ、羨ましかった。
だからこんな風に今年の夏祭りに、大好きなひとと手を繋いでいけるとは思わなかったよ。
「たのしみ・・・!」
嬉しくてたまらなくって腕をぎゅっとだきしめた。
「・・・う、うん。」
途端に瞬の歩き方がかちこちになるから、手を繋ぎ直した。
「歩きにくい?」
「・・・いや、ちげぇ・・。」