【完】キミと生きた証
あいつは俺を見つめてる。
俺はあいつを見つめてる。
・・か・・可愛い。
真っ白な肌。頬は赤く染まってる。
身長が低いから、俺を見上げる茶色い瞳。
ちっちぇー口ちょい開けて、ぼけーっとこっちを見つめてる。
あいつはハッとした顔をして、目線をそらして本を取りだした。
止まったら人形みたいだし、動いたらポメラニアンみてぇ。
なんつーか、クッソ可愛い。ツボ。
生まれて初めてナンパまがいなことしてる。
高校名聞いて名前聞いて、学年まで聞いた。
ちぃって呼ぶことになった。
沈黙の中、たまに言葉を交わしていると、あっさりと電車が来てしまう。
「じゃあまたね」
ちぃは包帯でぐるぐると巻かれた手を振って、俺とは別の車両に乗り込んでいった。
ガタン・・ガタン・・・
雪道を走る電車の音。
そんなもんでごまかせてんのか?
俺の心臓がさっきからうるせえ。
なんだコレ?
窓の外に集中して、気になってたまらない隣の車両を視界に入れないように徹した。