【完】キミと生きた証
「手術中」の赤いランプがパチンと消えた。
長時間に及ぶ手術が終わると、医者が手術の成功を告げた。
心停止にまで陥ったと聞いて、血の気が引いたけど・・今は安定してるらしい。
「ちーちゃん・・っ。」
ちとせのお母さんが大泣きしてる。
俺は自分の震える指先をぐっとにぎりしめた。
ちとせは、ICUの機械まみれな部屋に寝かされた。
朝が来るまで、その機械はなんの異常も示さなかった。
もう長いこと眠ったままだ。
カーテンをあけると、朝の光が差し込んだ。
・・・この部屋が異世界に見える。
ひっきりなしに動いてる機械は、ちとせの心臓をみつめてる。
まだ、眠ったままうごかない。
ちとせは小さい口元に人工呼吸器のマスクをはめられて、マスクの中が白く曇るのをただ見つめていた。
・・・目、覚まさなかったら・・・どうしよう。
震える手で、ちとせの小さな手のひらを握った。
・・・ちとせ。
早く起きろよ・・・。
たまに過る縁起でもない弱気をかき消して、ひたすら祈った。
どんな宗教のどんな神様でもいいから
たのむから、ちとせを助けてくれ・・・・。
「瞬くん・・一睡もしてないでしょ。目覚めたら呼ぶから、ね。」
「大丈夫です・・・。」
俺はちとせの傍を離れたくなかった。
でも俺は所詮ただの”彼氏”だ。
夜が来る前に、病院から家に送り返された。