【完】キミと生きた証
翌日には瞬が来てくれて、仁奈ちゃんのくれたピンクのリップを塗って待ってた。
「ちとせ、体調どうだ?」
「うん。へーき。」
にっと笑ってみると、瞬の視線があたしの唇に下りた。
「なんか、いつもと違ぇ。」
「貰ったの」
ピンクのリップを手にとって見せた。
あたしの手が動くのにしたがって、吊るされた点滴がカタンとゆれた。
「いい匂いなんだよ。」
「へぇ。どんな?」
「甘い匂い。味も、ちょっと・・甘い。」
そう言うと、瞬の手があたしの頬に添えられて、
瞬のきれいな目があたしを捉える。
近づく、瞬のうすい唇。
ふわっと一瞬重なって、すぐに離れた。
「・・・ひさしぶりで//恥ずかしい・・。」
あたしが真っ赤になって俯くと
瞬は嬉しそうに笑う。
「ほんとだ。甘ぇ」
くすくすと小さな声で笑ったら、大きなあったかい手のひらがあたしの手を包んだ。
「退院したら何しよっか。」
「うーん。また・・デートしたい。」
「どこ行くか考えとこっか。お互いな。」
「うん。」
行きたいところ・・・行きたいところ。
退院するのいつになるかな。
もしかして冬かな。
去年、瞬があたしに好きって言ってくれた「クリスマスツリー」に行きたいな。
それから、
またけやきの駅の待合室でふたりでのんびりお喋りしたい。
したいこと、ゆっくり話すと、瞬が「全部行こう」って。
「早く、元気に・・なるね。」
「うん。」
瞬の手のひらがあたしの髪を優しく撫でた。