【完】キミと生きた証
今もちかくにある、瞬の笑顔は優しくて。


・・・ちょっとさみしくなってきた。



あたしは車いすから立ち上がって、瞬のとなりへ移動した。



瞬の腕をぎゅっとつかんで、背の高い瞬の身長より、もっと大きいツリーを見上げた。


「立ってられるか?」


「うん。体力、つけないと。」


「そっか。」



瞬の横顔も・・温もりも。


・・・絶対、ひとつも忘れたくない。





ほんとは今すぐ抱きしめたいよ。



全部全部、自分のものにしちゃいたいよ。



そしたら離れなくてすむでしょう?



「ちとせ、眉間にしわ。」



瞬の人差し指が、つんとあたしのおでこをはじいた。



あたしがおでこをこすると、瞬はいたずらっぽく笑うんだ。



・・・もう、いいもん。


だれがいても、いなくても。



あたしは瞬に抱きついた。



・・・硬くて大きい瞬の体。




「あ!?・・・え?どうした?ちとせ?」



瞬が慌てて、じたばたするけど。



「・・・このままで、いさせて。」




あたしのお願い、すぐに聞いてくれる。



瞬はそのまま動かずに、



真っ赤になって、あたしを見ない。



そっぽむいちゃう、瞬の横顔。



・・・大好きだよ。



離れたくない。




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