【完】キミと生きた証
あたしは霧沢ちとせ(キリサワ チトセ)。
初恋もまだの16歳、高校1年生。
あだ名は「ちーちゃん」。クラスのみんなからは妹扱いされてる。
原因は150センチいかないちっちゃい身長のせいかな。
・・・なんて、そうだったらいいんだけど、本当は心臓病だからあんまり機敏に動けないの。
だから手伝ってもらったり、待っててもらったりすることが多くて、結果的にみんなが年上役になっちゃうんだと思う。
「ちーちゃんは今日も電車?」
「うん。仁奈ちゃんはまさか自転車?」
「勿論!」
帰り支度をもう済ませて、完全防備で立ってるのは親友の仁奈子(になこ)。あだ名は仁奈ちゃん。
活発で明るくて、クラスのムードメーカー。
にっこり笑うとえくぼができる。
仁奈ちゃんの髪は入学したときからショートヘアー。
中学の時陸上部だったから、暑くないように短くしててそのまんまなんだって。
冬だから、ちょっと寒そうな首元。
「仁奈ちゃん、マフラーは?」
「忘れてきた!へへっ!」
「雪の中自転車で帰るんでしょ?このマフラーしていって!」
「大丈夫だよ!そんなことしたら、ちーちゃんの方が風邪ひいちゃうよ!ほら、支度して!」
「あたしは首まで髪の毛あるから!」
肩下まで伸ばした茶色い髪を見せるけど、仁奈ちゃんの手はあたしの首元に伸びて、真っ白なマフラーを巻いて後ろで結んでくれた。
「よし、これで大丈夫。」
仁奈ちゃんはにっと笑うとあたしの頭をポンとひとなで。
「仁奈ちゃん、言うこと聞いてくれないんだから・・・。」
15センチくらい身長の高い仁奈ちゃんを困り顔で見上げるあたし。そんなあたしの頭を仁奈ちゃんはまたまたポンと撫でた。
「気持ちだけで十分!門まで一緒に帰ろ、ちーちゃん。」
仁奈ちゃんと一緒にゆっくりと学校を出て、門まで歩く。
ちらちら舞う雪は頬に当たると冷たくてきもちいい。
門を出ると、仁奈ちゃんはスカートの下に履いたジャージの裾を伸ばして防寒をきわめてる。
「じゃ!ばいばい!」
「ばいばい、仁奈ちゃん」
颯爽と帰っていく仁奈ちゃんに手を振って、あたしは駅に向かう。