【完】キミと生きた証
・・・俺はちとせが笑ってると、単純に嬉しかった。


涙も流さず、いつもの笑顔なら、元気だし楽しいんだって思えたから。



笑顔の裏側まで見てなかった。



「瞬、足大丈夫?」


窓ガラスががらりと開いた。



俺は身をのりだすちとせを抱きしめた。




「え・・?!ちょ・・瞬、真由ちゃん先生いるから・・。」



ごめん。


なんもわかってなかった。




「お前のこと大事過ぎて・・いろいろ、見えてなかった。ごめん。」



「・・な、何?何の話?」



ちとせの体を離すと、真っ赤な頬を両手で押さえて、大きな目が俺をみつめてる。



ちとせの小さな背中にカーテンをくぐらせて、保健室と俺たちの間を仕切った。



「・・・頼ってないわけじゃねえんだよ。ちとせが居るだけで、満足してただけなんだ。」



「うん・・・?」



「たとえば、肩かしてくれたり、テーピングしてくれたり、そんなことより、ちとせがちょこんと俺の傍にいるだけで、満足してたんだよ。」



「あ、あの日の・・?」


唐突だったか、ちとせが戸惑ってる。



「悪かった。デリカシーがなかった。」



「なんで謝るの?悪いの、あたしだよ?」




「・・・ちとせも我慢しないで言って。俺も思ってること、ちゃんと伝えるようにするから。」





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