【完】キミと生きた証
ずっと室内にいるあたしは、夏の暑さも感じない。
あたしは、ICUから個室に戻って、何をするわけでもなく、絶対安静だった。
1週間は瞬が来ても、会話もあまりできなかった。
息が途切れて、苦しいから。
あんまり喋れないから、来なくていいよって伝えたけど、「俺が会いたいから」って毎日来てくれてる。
今日もそう。8月の暑さの中、瞬はあたしに会いに来てくれた。
「す・・砂時計の・・夢、みた。」
「砂時計?」
「うん・・。きらきらした・・金色の。」
「へぇ?なんでまた砂時計?」
「わか、ない。でも・・瞬の、金髪の・・・イメージ・・。」
きらきらの金髪は、黒髪に変わってもう2年もたってるのに。
出逢ったばかりの瞬がいたの。
「あの頃・・元気だった・・・・のに、な。」
「今だけだよ。ちょうど夏だから。調子悪くなりやすいんだよ。全国的に。」
「全国・・って。あはっ・・。」
重たい手を伸ばして、瞬の髪に触れた。
「・・・好き。」
ぽとんとベッドに手が落ちる前に、瞬の手が力強くあたしの手を握ってくれる。