【完】キミと生きた証


「もうそろそろかな。」


瞬はそう言うと、俯くあたしの目線をあげさせて、窓の外を指さした。



がらがらと窓をあけると、セミの声がはっきり聞こえる。


日が落ちた、夏の夜風はあったかい。



「・・・あ。」


薄暗い窓の外に、遠くで咲く、小さな花火。


行きたかった、夏祭りの花火だ。


そっか、もう、今日だったんだ。



「こっち、座るか?」


「うん。」


瞬があたしを抱っこして、椅子に座らせた。



並んで、手をつないで、見つめる小さな一輪の花火。




「今年も・・一緒に、見れた。」



瞬は遠くの花火を見つめてる。



ふと見せるのは、辛そうな、悲しそうな横顔。



「瞬・・?」



名前を呼べば、笑うけど。



あたしがその顔を見つめると、抱きしめて、隠すの。




・・・瞬も、辛いんだ。



でもあたしは・・何もできない。



無力で、悲しい。


瞬の腕の中で、肩を震わせた。



「・・・泣き虫。」



瞬はあたしをだきしめて、頭を撫でてくれる。



あたしはそんな瞬をできるだけぎゅっとだきしめる。


そして、花火の音に消されないように、今日もまた伝える。



「瞬・・好き。」



あたしの涙を拭って、キスをする。



唇を離すと、その切ない顔が見えて、あたしの目にはまた涙があふれた。


< 395 / 478 >

この作品をシェア

pagetop