【完】キミと生きた証
「もうそろそろかな。」
瞬はそう言うと、俯くあたしの目線をあげさせて、窓の外を指さした。
がらがらと窓をあけると、セミの声がはっきり聞こえる。
日が落ちた、夏の夜風はあったかい。
「・・・あ。」
薄暗い窓の外に、遠くで咲く、小さな花火。
行きたかった、夏祭りの花火だ。
そっか、もう、今日だったんだ。
「こっち、座るか?」
「うん。」
瞬があたしを抱っこして、椅子に座らせた。
並んで、手をつないで、見つめる小さな一輪の花火。
「今年も・・一緒に、見れた。」
瞬は遠くの花火を見つめてる。
ふと見せるのは、辛そうな、悲しそうな横顔。
「瞬・・?」
名前を呼べば、笑うけど。
あたしがその顔を見つめると、抱きしめて、隠すの。
・・・瞬も、辛いんだ。
でもあたしは・・何もできない。
無力で、悲しい。
瞬の腕の中で、肩を震わせた。
「・・・泣き虫。」
瞬はあたしをだきしめて、頭を撫でてくれる。
あたしはそんな瞬をできるだけぎゅっとだきしめる。
そして、花火の音に消されないように、今日もまた伝える。
「瞬・・好き。」
あたしの涙を拭って、キスをする。
唇を離すと、その切ない顔が見えて、あたしの目にはまた涙があふれた。