【完】キミと生きた証
ちとせは移動する車に乗り込んだ。


酸素カニューレをのせて、あらゆる装備も万全そうだ。



「いって・・くるね。」


俺だって、こんな時はちとせの笑顔が見たい。





俺は、にっと笑った。




「ぜってぇ負けんな!」




涙混じりで叫んだら、ちとせは泣きながら笑って、大きく頷いた。




涙を拭う俺に、ちとせは涙を流しながら手を振った。




車は裏口に回って、残りの荷物を積んでいる。



ちとせのお母さんが俺の元へ来た。



「瞬くん・・・。これ、使って。ちーちゃんも瞬くんの受験、すっごく応援してるから・・・。どうか・・頑張って。」



鞄に入ってたのは、ちとせの使ってた参考書に、単語帳。



カラフルな単語帳が、今は眩しくてしかたない。



溢れそうになる涙をこらえた。



「ちとせのこと・・・お願いします。」



もう俺には、何にもできないけど。



「ありがとう・・・瞬くん・・。ごめんなさい・・・。」



泣きながら何度も謝るちとせのお母さんに、返す言葉も見つからなかった。


きっと俺の気持ちが、痛いほどわかるのはこの人だ。




車の中の人にせかされて、ちとせのお母さんも乗り込んでいった。



その車はあっけないほど簡単に、病院をあとにした。




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