【完】キミと生きた証
未来(Side瞬)
Side 瞬
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あれからもう1か月以上がたった。
10月に入っても、心は空っぽになったままだった。
離れてから、ちとせやちとせのお母さんの携帯に電話をしても、一度もつながることはなかった。
きっと、携帯も変えたんだろう。
心移植のできる南と北の病院にそれぞれ電話もしてみたけど。個人情報の保護っていうのは、意外と頑丈だった。
仁奈子にすら連絡はきてないらしい。
なんで、仁奈子にまで、連絡しないんだ・・?
頭を左右に振って、過りそうになる不安をかき消した。
「でもちーちゃん、しばらく安静だから連絡できないって言ってたし、待ってあげようよ。」
そう言いながらも仁奈子は、しょんぼりと携帯をみつめてる。
仁奈子はともかく、俺のところに連絡なんかよこすわけないのはわかってる。
でもいつか、連絡が来るんじゃないかって。
・・・そう思いたくて。
「武石。」
塾の講師に名前を呼ばれて、返却されたセンタープレ模試を開いた。
公立大学…B判定。
「すごいじゃないか。ようやくスランプ抜け出したな。」
「…はぁ。」
「なんだその返事は。もっと気合いれろ!あと、何度もいってるけど髪の色も戻せ!もう新学期はじまってるんだからな!」
「北工に校則なんてねぇっすよ。」
塾が終われば、空を見上げる。
北でも、南でも・・・。
遠くにいて、絶対生きてるちとせと、つながれるような場所は、空しかないから。