【完】キミと生きた証
カツンと3回、窓を叩いた。



ひょこっと顔をだすのは・・・当たり前だけど、ちとせじゃない。



「どうしたの?瞬くん。まった・・・何それ。金髪にしたの?」



小せえ目をぱちぱちさせて、俺を一瞥する。



「って、なにその怪我!?」


「なぁ、真由・・。」


「何?って、まずは入って。手当するから。」



久しぶりの保健室。


ちとせの面影なんか、一切ないのに。



なんでいないのか不思議になって、意味わかんねえくらい悲しくなる。



「できた。もう、どうしたのこれ?」



包帯でぐるぐる巻かれた左手を見たら、初めて会った日のちとせを思い出した。



”やけど・・しちゃうから”



ぐっと奥歯をかみしめた。



・・・ちとせを想うと泣きそうになる。



「瞬くん?どうしたの?」



「・・・ちとせ、今どうしてるか知らねえか?」



「ちーちゃん?なんで?なんかあったの?」



首をかしげる真由は、本当に何も知らなそうだ。



・・・そりゃそうだよな。



「なんでもねえ。」


「何?ふたり・・もしかして別れたの?」


「・・・。真由はさ、大人だから・・・わかるよな。本気の恋」


「本気の恋?」



首をかしげる真由。



「・・・は。まぁ、いいや。さんきゅ。」




とぼとぼと、北工に帰った。




ちとせの居場所も、現状も・・・知ってるわけねえよ。


ちとせは、誰かに言うつもりなんて・・・きっとなかったんだ。




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