【完】キミと生きた証
・・・そして、何の連絡もないまま。
今年もあの季節がやってくる。
初雪がちらつく、11月の終わり頃。
ちとせが編んでくれたマフラーを巻いて、汚ねえ校舎の玄関に立ちつくして、舞い降りる雪を目で追った。
「彼女と別れたのがそんなに辛いの?」
その声に振り向くと、イズミが居た。
「・・・なんでお前が知ってんだよ。」
「みんな知ってるよ。二学期入った時点でふつーに噂になってたよ。」
イズミは俺を真似て、雪を眺めはじめた。
何を話すわけでもなく俺の傍に立って、「はぁ、さむ。」って呟きながら息を手にかけて暖をとってる。
「・・・帰らねえのかよ。」
「帰らないよね。」
だったらいい加減、俺が帰ろう。
「待ってよ。」
イズミは俺を追いかけて、冷え切った手で俺の手をつかんだ。
「・・・んだよ?」
不機嫌に呟くと、イズミは一瞬顔をこわばらせる。
「そんな・・怒んないでよ。」
パッと俺の手を離してから、もってた紙袋を俺に押し付けた。
「受験、頑張って。」
そういって、すたすたと先を歩き始めた。
長い黒髪をさらさら揺らし、白い息を残しながら。
袋の中身を覗けば、薄い本がはいってた。
・・・”南高校・国立・公立大学受験対策”のコピーを製本した・・・手作りのような冊子。
南高・・・?